2018 Fiscal Year Annual Research Report
合成分子と蛋白質を駆使した膜蛋白質の動態解明技術の開発
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17H02210
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堀 雄一郎 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00444563)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | PYPタグ / ハイブリッドプローブ / 内在性膜蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、蛋白質ラベル化技術を応用することで、内在性膜蛋白質を生細胞で蛍光イメージングする新しい技術を開発する。 内在性膜蛋白質をイメージングするプローブには、標的蛋白質を特異的に認識するユニットとその標的蛋白質に結合すると蛍光強度を増大するユニットを組込む。前者の認識ユニットとしてナノボディを用いる。ナノボディは、ラクダ科動物由来の抗体フラグメントで、通常の抗体に比べサイズが小さく、細胞内安定性が高いうえに、遺伝子工学による取扱いが容易であるという利点がある。後者の蛍光ユニットとしては、細胞膜のような疎水性領域で蛍光を増大する色素を用いる。このプローブによるイメージングは、ナノボディが標的膜蛋白質に結合すると、近傍の細胞膜に色素が細胞膜に結合し蛍光強度を増大させるという原理に基づいている。ナノボディと色素を連結するために、蛋白質ラベル化技術を用いる。我々のグループでは、PYPという小蛋白質をタグとして用い、合成蛍光色素で標的蛋白質をラベル化・イメージングする技術を開発してきた。このPYPタグをナノボディに融合し、色素で特異的に標識することで、合成色素と蛋白質からなるハイブリッドプローブを構築する。 このハイブリッドプローブを、EGFRを一過性発現させたHEK293T細胞に添加すると細胞膜から蛍光が観測された。同様にして、EGFRを内在的に発現するA431細胞にハイブリッドプローブを添加すると、細胞膜から蛍光が観測された。siRNAでEGFRをノックダウンするとその蛍光が減少したことから、このハイブリッドプローブを用いることで、内在性の膜蛋白質を可視化することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標に従い、蛋白質ラベル化技術を用いることで、ナノボディと合成蛍光色素からなるハイブリッドプローブを構築した。このハイブリッドプローブは、標的蛋白質発現細胞に添加したとき、培地中の蛍光はほとんど観測されず、細胞膜から蛍光が観測された。ラベル化していないナノボディを添加すると細胞膜上の蛍光強度が減少した。このことは、観測された蛍光は、色素が非特異的に細胞膜に結合していないことを示している。さらに、ノックダウン実験を行い、その蛍光が確かに標的蛋白質に由来することが確認された。このように、当初掲げていた内在性膜蛋白質のイメージング技術の開発に成功し、おおむね順調に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
膜蛋白質には、ERからゴルジを経て細胞膜へ移行し機能を発現する場合と、何らかの理由で細胞膜へ移行せず、細胞内のオルガネラ膜に滞留しているものがある。この内部に滞留している膜蛋白質がどのような挙動をし、分解経路に進んでいくのかは、不明な部分が多くある。細胞膜に移行した蛋白質と同様の経路で最終的に分解されるのか、もしくは、異なる経路をたどり分解されるのかは、よくわかっていない。そこで、本研究では、これらの蛋白質を区別してイメージングするプローブを開発し、膜蛋白質の動態を詳細に可視化する技術を開発する。
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