2017 Fiscal Year Annual Research Report
Experience-induced hippocampal asymmetry in rodents
Project/Area Number |
17H02221
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
篠原 良章 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (10425423)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脳 / 左右差 / 海馬 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳の左右差にあることは非常によく知られているが、ヒトでは分子基盤や神経回路基盤はほとんど分かっていない。我々が研究を行っている齧歯類の海馬は、シナプス形態を含む神経回路・脳波などの神経活動・動物の記憶と、多くの点で左右差が研究されており、左右差の起こるメカニズムについては最も良く分かっている脳の部位である。私は生理学と解剖学を組み合わせてなぜ脳の左右差が生じるのか・生体にとってどのようなメリットがあるのかを解明したいと考えている。 この海馬の左右差は発生期の遺伝プログラムで決まっていることは既に分かっている。しかし、動物の生後の環境も左右差に形成に影響をもたらすことも知られており、ラットでは生後ラットを豊かな環境に入れることで右側CA1の海馬γ波が左海馬より顕著に増大し、右側のシナプス数も左側より多いと言う現象が我々の研究で発見された(Shinohara et al., Nat Commun (2013))。しかし、なぜ右海馬が経験依存的に優位になるのか、脳の情報処理にとってどのような意義があるのか、についてはほとんど分かっていない。そのために引き続き豊かな環境でラットを飼育し、その結果生じる海馬の左右差について、その原因を検証する。 まだ研究課題の1年目であるため、現時点で報告できるデータは乏しいが、研究期間中に結果を報告したい。なお、左右差の発達にアストロサイトのカルシウム活動が関与する可能性を考え、アストロサイトのカルシウム活動が生じないマウスを使って実験を行った。 このデータについては、論文で結果を報告した(Tanaka et al., J Physiol. (2017))
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当研究課題がちょうど始まった平成29年4月に、私は理化学研究所神経グリア回路研究室から名古屋市立大学医学研究科・統合解剖学講座に異動した。そのため、新たに脳波測定及び電子顕微鏡を含む形態学の実験系を組む必要があった。この実験系の構築にほぼ1年かかったため、当初予定していたより実験の進捗は遅れている。 しかし、現時点でようやく実験環境が一通り整ってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
1右優位性をもたらす可能性があると考えている要因(候補)を阻害することで経験依存的な右優位のメカニズムを探る。 2豊かな環境下で、右に強く誘導される遺伝子を検出する。 の2つのアプローチを取る。 私の研究結果では、シナプス数、γ波、双方とも右優位を示すが、右優位を簡便に判定する方法としては、脳波の方が早い。そこで、豊かな環境でラットを飼育し、ラットの両側に多電極シリコンプローブを挿入し、麻酔下の動物からθ波に随伴するγ波を測定する。さらに、同様にラットを豊かな環境で飼育した後、分子を用いて右優位性を阻害することで、該当する分子が海馬の右優位性を惹起することを示す。
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