2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a technique of manipulation of neural circuit in primates
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17H02224
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
肥後 剛康 京都大学, 医学研究科, 講師 (10396757)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 霊長類 / 高次脳機能 / ウイルスベクター / 前頭前野 |
Outline of Annual Research Achievements |
霊長類に特徴的な高次脳機能を神経回路レベルで解明するためには、神経回路操作技術の開発が必須である。しかし、マカク属サル等の霊長類では遺伝的背景が同一の個体(近交系)が存在せず、サル使用数の制限やヒトでは侵襲実験が不可など倫理的制約も存在するため、神経回路操作技術の開発は困難を極めており、国際的研究課題となっている。申請者は、この問題を解決するため、比較的長期 (数ヶ月)の遺伝子発現を可能とするアデノ随伴ウイルスベクター (AAV)を用い、特定の神経回路における遺伝子発現誘導を1個体内で繰り返しon/offする試みをマカク属サルにおいて行っている。昨年、大脳皮質内で最長投射の1つであるサル前頭前野(PFC)と下側頭葉皮質TE野間において、GFPをマーカーとした遺伝子発現操作に成功しており、更に、その応用として、シナプス情報伝達阻害分子であるテタヌストキシン (eTeNT)の誘導にも成功している。これら遺伝子発現誘導はドキシサイクリン(Dox)投与によって可逆的に制御されるよう設計されている(Tet-Onシステム)。その後、eTeNT誘導による可逆的かつ長期的な神経遮断の電気生理学的検証に研究は進んだが、TE野への手術ダメージが予想外に大きく、安定的かつ長期的な電気生理記録が困難であることが判明したため、長距離でありながら投射が強く、手術ダメージが少なく済む左右半球の運動前野 (F7)間の交連投射に標的を変更した。現在、F7間でのeTeNTの投射特異的、可逆的、長期的発現を確認し、予備的ではあるが、F7間の情報伝達遮断を確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の課題であるAAV注入手術による大脳皮質のダメージの軽減に関して、手術方法を改善することができ、さらに安定的かつ長期的な電気生理学検証体制を構築することができた。また、本研究の目的達成には、手術ダメージが少なく済むであろう神経回路の選定が有効と考え、PFC-TE神経回路に代替する神経回路として長距離でありながら投射が強い左右半球の運動前野 (F7)間交連投射に標的を変更した。現在、F7間でのeTeNTの投射特異的、可逆的、長期的発現を確認し、予備的ではあるが、F7間の情報伝達遮断を確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、再度、両側F7間でeTeNTを投射特異的、可逆的に発現させ電気生理学解析を行うことで、今年度得られた結果の再現性を確認し、サル神経回路操作技術を完成させる。最終的には、開発した回路遮断技術を高次脳機能課題を訓練したマカクザルの大脳皮質神経回路に適用することで、霊長類高次脳機能の制御メカニズム解明に繋げる。
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