2020 Fiscal Year Annual Research Report
An Interdisciplinary Study of the Interaction between Utterances and Social Contexts in terms of Dynamic Modal Logic
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17H02258
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山田 友幸 北海道大学, 文学研究院, 名誉教授 (40166723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 勝彦 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (20456809)
金子 守 筑波大学, システム情報系, 名誉教授 (40114061)
東条 敏 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (90272989)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 言語行為 / エージェントコミュニケーション / 証明論 / ゲーム理論 / 人工知能 / 動的義務論理 / 項列様相論理 / 様相述語論理 |
Outline of Annual Research Achievements |
山田と佐野は、行為主体を表す項の列への様相演算子の相対化を許すことによりフィッティングら(2001)の項様相論理を拡張した項列様相論理により、山田(2008)の指令と約束の動的様相命題論理を動的様相述語論理へと拡張する基盤になる静的義務述語論理を定式化した。 また山田は、現実に存在する個体が必然的に存在する等の不自然な形而上学的想定を必要としない Seligman (2016) らの常識的様相述語算の手法を、上記の静的義務述語論理に等号を加えた体系に取り入れる研究を進めたほか、許可行為の分析も進めた。 佐野は、Liu と van Benthem による関係変更の動的論理の再帰公理を使わない意味論的完全性を論じ、当該論理を直観主義論理へと一般化した。また Seligman による常識的様相述語算をS5以外の論理へと一般化し、一部の場合について意味論的完全性を示し、証明論を整備した。さらに部分論理式特性をもつ時制論理のシーケント計算の研究と、グラフの平面性を表現する様相論理の研究(AWPL2021 の Best Paper Award を受賞)を行うとともに、直観主義論理上で疑問文を形式化する論理がクリプキ意味論に対してもつ表現力の意味論的特徴づけを与えた。 東条はエージェントコミュニケーションの論理化において議論理論 (Argumentation Theory) の命題論理基盤を研究するとともに、エージェント通信における「未知」と「解釈不能」を区別するために多値論理を研究し,暗号通信の機密として有望な量子オートマトンを量子論理に翻訳する過程にこの成果を応用した。 金子は、昨年度の本研究の成果(Kaneko 2019)の応用として、セント・ぺテルスブルグパラドックスを分析し、胴元と賭けの参加者達から成る市場モデルを与え、パラドックスの解消に向けて研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者、分担者とも順調に研究を進めており、扱える事象のタイプも順調に拡大している。さらに、昨年度の研究により、項様相論理を項列様相論理に拡張できたことにより、コミュニケーションの主体を表す複数の項へと相対化された様相演算子を導入することが可能になり、これまで研究してきた動的様相命題論理による発話のもたらす状況変化の分析を、応募段階では視野に入っていなかった様相述語論理へと拡張する基盤が整った。これを受けて今年度は項列様相義務論理に常識的様相述語論理における量化の取り扱いを統合することにより、豊かな内容を無理なく表現できる言語行為の論理の構築を開始した。この課題を達成するためには、項列様相述語論理の動態化が必要であり、今年度の研究により、そのために等号を含む述語論理への拡張が必要になることが明らかになった。等号の導入による動態化と常識的様相述語論理における量化の取り扱いの取入れの両方を同時に実現することができれば、きわめて革新的な成果となることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究で項様相論理を項列様相論理に拡張できたことにより、コミュニケーションの関係者たちを表す複数の項へと相対化された様相演算子を導入することが可能になり、これまで研究してきた動的様相命題論理による発話のもたらす状況変化の分析を、応募段階では視野に入っていなかった様相述語論理へと拡張する基盤が整っている。そこで今年度からの研究においては、この基盤の上に、まず、項列義務論理を動態化して、指令と約束の動的様相命題論理の様相述語論理への拡張を行うことが課題となった。今年度の研究により、これには等号の導入が必要になることが既に明らかになっている。また一昨年度研究した常識的様相述語論理における量化の取り扱いをこの拡張された論理に統合することにより、豊かな内容を、形而上学的に不自然な仮定に頼らずに、無理なく表現できる動的様相述語論理が得られる。その第一歩が指令と約束の常識的動的様相述語論理の定式化であり、多様な種類の言語行為の働きの特徴づけは、この動態化の手法の多様化により与えられることが期待される。ただし様相論理における常識的な量化の扱いのもとで、等号の論理の組み込みを実現し完全性を証明するために、既存の等号の扱いがそのまま応用できるかどうかはいまだ明らかではなく、最終年度である令和3年度においては、等号の扱いが中心課題の一つになる。その際、Corsi(2002)に示された手法の検討が一つの手がかりとなる可能性があるので、令和3年度においては、山田と佐野はまずこの手法の詳細な検討を行い、等号の適切な扱いを確立して、等号を含む常識的動的項列様相述語論理の完全性の確立を目指す。これにより、金子の認識論理による意思決定の研究および東条の動的認識論理およびその簡易化によるエージェントコミュニケーションの研究との相互活性化が見込める言語行為の働きの論理的特徴づけを行う。
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