2019 Fiscal Year Annual Research Report
New developments of the philosophy of mathematics
Project/Area Number |
17H02263
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
菊池 誠 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (60273801)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 賢吾 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (00224072)
岡田 光弘 慶應義塾大学, 文学部(三田), 名誉教授 (30224025)
三好 博之 京都産業大学, 理学部, 教授 (60286135)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 数学の哲学 / 論理学の哲学 / 計算の哲学 / 数学基礎論 / 証明論 / 集合論 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代の数学の哲学には (1) 数学の算術および集合論への還元,(2) 一階論理上での集合論の公理化,(3) 一階論理による証明概念の形式化,(4) チューリング機械による計算可能性の特徴付けという[四つの原理]がある.本研究はこの[四つの原理]と現代の[標準的数学観]の関係,[四つの原理]とそれらの相互の関係をに検討することで,数学の哲学の新たな展開と,計算・推論・情報の概念の哲学的解明を目指すものである.2019年度中には以下の活動を行った.(1) 2019年9月3 日から9月6日まで静岡大学静岡キャンパスにおいて「数学基礎論サマースクール(テーマ:集合論,特に選択公理と連続体仮説)」を開催し た.(2) 日本科学哲学会2019年度大会においてシンポジウム「タイプ理論再考:Types, Abstraction, Classification」を開催した.(3) 科学基礎論学会2019年度研究例会においてワークショップ「ゲーデルと21世紀の論理学」を開催した.(4) 科学基礎論学会2021年度研究例会においてワークショップ「集合と連続体の哲学」を開始した.(5) 雑誌「数学セミナー」に「数と論理の物語:不完全性定理について考えるための20の定理」を連載した(菊池誠),これらの活動の結果として,以下の成果を得た.(1) 強制法及び構成可能集合を用いた連続体仮説の独立性証明の再考をして,現在の集合論と連続体の問題の関係について論じた.(2)「規則に従う」についての Wittgenstein の議論の変化を検討した.(3) 順序構造による計算の強正規化証明を検討した.(4) 情報の哲学の観点から論理学・数学の哲学の基本問題を再検討した.(5) Maltsiniotis の定義を通じて(∞,∞)-圏の論理ついて考察した.(6) 不完全性定理と数学基礎論の諸定理の関係を検討した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は数学および哲学の両面から数学の哲学の[四つの原理]と現代の[標準的数学観]を再検討し,さらに,[四つの原理]の分析と改訂を目指すものである.前者は中長期的な研究で,単年度で成果を求めるものではなく,本研究の研究期間全体を通して成果を挙げることを目指すものである.後者はより短期的な研究である.2019年度中は,2018年度中に Buss,Sieg, Girard,八杉満利子,難波完爾,小澤正直を招待講演者として開催した国際シンポジウムの Proceedings を刊行予定であったが,刊行が遅れている.また,2019年度中に開催の予定であった数学の哲学ウィンタースクールも開催されていない.また,2019年度中に刊行予定であった2018年度に開催した「数学基礎論サマースクール」に基づいた研究書も執筆が遅れている.このように当初計画のあった研究成果の発表は遅れている.一方,後者の課題に関連する話題で2019年度中に開催した「数学基礎論サマースクール」は数学的及び哲学的両面において優れた成果を挙げ,前者の長期的研究にも繋がる更なる研究課題へと発展した.また,「数学セミナー」への連載によって不完全性定理についての議論も深まっている.このように,当初の計画からは遅れている部分と当初の計画よりも進んでいる部分があり,全体として見れば概ね順調に進展していると判断される.
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度中には「数学の哲学セミナー」を複数回実施し,計算の哲学に関するワークショップを開催する予定である.ただし,新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,これらの企画が実施できない可能性がある.その場合には,分担者の個人の研究及び共同研究を中心に研究を進める.また,刊行の遅れている国際シンポジウムの Proceedings を刊行し,証明論及び集合論についての基本的な枠組みを数学的及び哲学的な立場から再考することで,2018年度開催の「数学基礎論サマースクール」に基づく研究書,2019年度に開催の「数学基礎論サマースクール」に基づく研究書を刊行の予定である.さらに,特に竹内外史の数学に基づく数学の哲学の分析を進める.これらの活動を通して,数学の哲学の[四つの原理]と現代の[標準的数学観]の再検討については前年度の研究成果に基づき詳細の検討を継続する.[四つの原理]の分析と改訂については特に型理論,圏論,証明論,集合論,算術および実数論の研究を重点的に進める.
|