2019 Fiscal Year Annual Research Report
バーミヤン渓谷出土写本を中心とする新出仏教写本の研究
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17H02272
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
松田 和信 佛教大学, 仏教学部, 教授 (90268128)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 仏教学 / 写本 / サンスクリット語 / ガンダーラ語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアフガニスタンのバーミヤン渓谷から近年発見されたサンスクリット語およびガンダーラ語のインド語仏教写本断簡類、さらに他地域から発見された関連するサンスクリット語写本類に対して、海外の研究協力者と共に解読研究を行い、写本から回収される新たな仏教文献の原典を出版することを目的とする。その中でも、特に、バーミヤン渓谷出土写本については『スコイエン・コレクションの仏教写本』の第5巻(最終巻)としてオスロより刊行することを目的としている。2019年度は、スコイエン・コレクション(ノルウェー)蒐集のバーミヤン出土写本に加えて、パキスタンのギルギットから発見されたと伝えられるサンスクリット語による『長阿含経』写本、チベット・ラサに保存された『菩薩蔵経』のサンスクリット語写本、さらに最近発見されたアフガニスタンのメス・アイナック遺跡出土のサンスクリット語樺皮写本断簡類について、2018年度に引き続いて海外の研究協力者と共に解読作業を行うとともに、テクスト作成を行った。特にバーミヤン出土のサンスクリット語写本については、ドイツ・ミュンヘン大学のイエンス=ウヴェ・ハルトマン教授を訪れて共同で解読作業を行い、さらにゲント大学の Charles DiSimone 博士を研究代表者の属する佛教大学に招聘して、メス・アイナック遺跡出土写本断簡の解読を行った。解読の結果、メス・アイナック遺跡出土写本には、6-7世紀に書写されたと推定される『弥勒下生成仏経』『八千頌般若経』『法華経』の樺皮写本断簡が含まれることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究プロジェクトの3年目が終了した段階であるが、研究対象とするサンスクリット語およびガンダーラ語のインド語仏教写本にかかわる資料はすべて入手し、同じ写本類を研究している海外の研究協力者との連携にも問題点は見られない。複数の海外学会において研究発表も行い、海外研究協力者を研究代表者の所属機関に招聘して共に写本を解読して難読箇所を解明する機会も持った。よって、概ね研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
バーミヤンあるいはその近隣地域からの新発見写本は膨大な量に上り、先に終了した研究プロジェクト等によって刊行された『スコイエン・コレクションの仏教写本』の第1巻から第4巻の大冊4巻を持ってしても、研究代表者と海外研究協力者は新発見写本全体の約半数を出版したに過ぎない。次年度以降も、海外研究協力者と密な連絡を取りながら、本研究終了後、『スコイエン・コレクションの仏教写本』の第5巻刊行に向けて、海外研究協力者と共に写本解読とテキスト校訂作業を続けていきたい。
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