2017 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative Religious Reflections on the Development of Izutsu's Oriental Philosophy
Project/Area Number |
17H02278
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
澤井 義次 天理大学, 人間学部, 教授 (30178826)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鎌田 繁 東京大学, 東洋文化研究所, 名誉教授 (70152840)
野元 晋 慶應義塾大学, 言語文化研究所(三田), 教授 (10276420)
氣多 雅子 京都大学, 文学研究科, 教授 (20201478)
市川 裕 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (20223084)
西平 直 京都大学, 教育学研究科, 教授 (90228205)
池澤 優 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (90250993)
河東 仁 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (80224799)
ロペス・パソス ファン・ホセ 天理大学, 国際学部, 講師 (30759650)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 井筒俊彦 / 東洋哲学 / 比較宗教学的な視座 / 東洋思想の共時的構造化 / 意味論 / 言語的意味分節 / 思想テクストとその解釈 / 意識の重層性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の澤井義次は、研究分担者と情報交換しながら、井筒・東洋哲学に関する引用文献やキータームのデータ化を進めた。各研究分担者は、比較宗教学的な視座から、井筒・東洋哲学とその思想構造の理解を踏まえて、その展開可能性を探究した。 具体的には、二回にわたって研究フォーラムを開催した。第一回研究フォーラムは、2017年6月10日(土)、天理大学で開催した。研究分担者の西平直(京都大学教授)が発題1「分節と無分節の同時現成」をおこない、次に研究協力者のザキプール・バフマン(駒澤大学・客員研究員)が発題2「井筒・東洋哲学の方法論をめぐる諸問題」をおこなった。さらに、研究分担者のロペス・パソス フアン・ホセ(天理大学講師)が発題3「井筒・東洋哲学における意識構造論」をおこない、最後に、研究分担者の鎌田繁(東京大学名誉教授)が「カタールにおける井筒哲学の国際会議に参加して」と題した国際会議報告をおこなった。その後、全体討議をおこない、井筒・東洋哲学の思想的展開性について検討した。 第二回研究フォーラムは、2018年2月18日(日)、西田幾多郎記念哲学館と鈴木大拙館での研究調査を進める中、金沢・兼六荘の会議室で開催した。まず、氣多雅子(京都大学教授)が発題1「井筒「言語哲学」とソシュール」をおこない、次に研究代表者の澤井義次が発題2「井筒・東洋哲学における「東洋」の意味」をおこなった。さらに野元晋(慶應義塾大学教授)と澤井が国際会議報告をおこなった。その後、全体討議をおこない、井筒・東洋哲学の展開について比較宗教学的な視座から検討した。 ところで、2017年9月17日(日)には、日本宗教学会第76回学術大会(於 東京大学)において、パネル発表(パネル代表・澤井義次)「井筒「東洋哲学」のパースペクティヴと宗教研究」もおこない、宗教研究における井筒・東洋哲学の現代的意義についても検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画は、おおむね順調に進展してきていると言えるであろう。研究代表者の澤井義次(天理大学教授)は、井筒・東洋哲学に関するデータ化を進めるとともに、井筒のインド哲学理解を踏まえて、井筒・東洋哲学の展開可能性を探究している。 さらに研究分担者による研究の進捗状況について記したい。まず、鎌田繁(東京大学名誉教授)は井筒のイスラーム哲学理解の特徴について、彼の生涯における思想展開を見渡して検討してきた。野元晋(慶應義塾大学教授)はイスラームのイスマーイール派を中心として、井筒のイスラーム解釈をアンリ・コルバンのそれと比較検討してきた。氣多雅子(京都大学教授)は井筒・東洋哲学を京都哲学とともに、ソシュールの言語哲学と比較しながら、その思想的展開性を探究してきた。 市川裕(東京大学教授)は、井筒・東洋哲学のキータームの一つである「アンチコスモス」の概念的枠組を援用しながら、ユダヤ思想の特徴を解釈しようと試みてきた。西平直(京都大学教授)は、井筒・東洋哲学の構造を「分節と無分節の同時現成」としてとらえ、井筒哲学の構造を明らかにしようとしてきた。池澤優(東京大学教授)は、中国思想の理解を踏まえて、応用倫理の視点から、井筒・東洋哲学の展開可能性を模索してきた。 また河東仁(立教大学教授)は、井筒・東洋哲学をユング心理学と比較しながら、井筒の哲学的思惟の構造を明らかにしようとしてきた。最後にロペス・パソス フアン・ホセ(天理大学講師)は、井筒・東洋哲学の意識構造論とその特徴を比較思想の視点から明らかにし、また特にハイデガーの思想と比較検討しながら、井筒・東洋哲学の思想展開の可能性を探究してきた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、次の3つを考えている。(1)井筒の著作や研究文献のデータ化を推進していく中に、井筒・東洋哲学の批判的な検討をおこない、(2)各研究分担者の専門的な研究視座から、井筒哲学の概念的枠組みを展開していく。さらに(3)それらの研究成果を踏まえて、井筒・東洋哲学に関する研究フォーラムを開催し、この共同研究の成果を広く世界へ向けて発信していく。 以下、この共同研究において、各自の個別研究の推進方策に言及したい。まず、澤井は、井筒の著作や研究文献のデータ化をさらに進めながら、井筒・東洋哲学の思想的特徴をインド宗教思想に沿って展開していく。鎌田は、井筒・東洋哲学の思想的展開を射程に入れながら、イラン的シーア派のイスラーム哲学の理解を進めて、井筒・東洋哲学の思想的特徴を未来志向的に展開していく。野元晋は、イスラーム哲学の中でも、特にイスマーイール派の思想を中心として、井筒のイスラーム哲学的思惟の構造とその特徴を明らかにしていく。 氣多雅子は、井筒の哲学的思惟を京都哲学や禅思想と比較することによって、井筒・東洋哲学の構造の特徴を解明し、その思想的可能性を展開していく。市川裕は、近代ユダヤ文化論に注目しながら、井筒のユダヤ思想理解を解釈学的に展開していく。西平直は、人間のライフサイクルおよび日本文化論の地平から、井筒哲学の思想的展開性を模索していく。 池澤優は、井筒・東洋哲学における存在の本質構造論を踏まえて、儒教思想における生命倫理観を掘り下げて考察する中に、井筒・東洋哲学の思想的展開性を検討する。河東仁はユング心理学と比較しながら、井筒・東洋哲学の心理学的展開の可能性を探究していく。ロペス・パソスは、いわば比較思想の立場から、井筒・東洋哲学の思想構造を探究し、井筒の哲学的思惟を批判的に展開していく。
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Remarks |
このデータベースは、科学研究費助成事業・基盤研究(B)による井筒・東洋哲学に関する共同研究の一環として、研究協力者の長岡徹郎氏(京都大学非常勤講師)によって作成されたものである。このデータベースには、井筒俊彦に関する日本語および欧文の研究文献が収録されている。
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