2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H02291
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
菅野 智明 筑波大学, 芸術系, 教授 (90272088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 千載 盛岡大学, 文学部, 教授 (20326705)
金 貴粉 大阪経済法科大学, アジア太平洋研究センター, 研究員 (20648711)
高橋 佑太 二松學舍大學, 文学部, 講師 (30803324)
下田 章平 相模女子大学, 学芸学部, 講師 (60825826)
高橋 利郎 大東文化大学, 文学部, 教授 (80647769)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 書壇 / 比較美術史 / 書道史 / 近代東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代東アジアにおいて組織化が活発になった「書壇」に着目し、日本・中国・朝鮮(韓国)という三地域の比較に基づく観点別分析を通して、その形成過程の構造的な跡付けを目的とするものである。2019年度は、その前年度に開催したシンポジウム「近代東アジアの書壇」から浮上した諸課題(書壇設立に関わった中心書人の階層や、前近代の中国文化の継承、あるいは西洋式近代化の導入のあり方など)を踏まえ、それぞれの地域書壇の形成について研究を進めた。 まず近代日本書壇関連では、研究分担者の髙橋利郎・矢野千載が研究を進め、当地の書道団体や展覧会において発表される作品の質的変遷を追うとともに、今日へと連なるものとして、それらの意味を探った。特に矢野は洋画家・小山正太郎の「書ハ美術ナラス」が近代において書の特質を問い直したものである側面を注視し、小山の弟子で書家としても活躍した中村不折を取りあげ、彼が書と美術をいかに捉えていたのか考察した。 近代中国書壇関連では、研究分担者の髙橋佑太が書の教育的側面が書壇形成に資する可能性を探求し、特に模書における書壇形成上の波及効果を考察した。研究代表者・菅野智明は、清末民初の能書家・李瑞清に着目し、彼が参画した出版事業が、結果として門下生との書壇形成を促した点を明らかにした。また、研究分担者・下田章平は、収蔵家を起点とした人脈形成に着目し、特に菊池惺堂の「淳化閣帖」収蔵の事例から、日中をまたぐ基幹的な収蔵家ネットワークを浮き彫りにした。 近代朝鮮書壇関連では、研究分担者・金基粉が当地の書画家である金圭鎮、呉世昌等に焦点を当て、彼等の書画活動と作品調査を進めることにより、その国際的な人脈と中国文化を介した緩やかなネットワークの形成を跡付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、その前年度において共有した諸課題を踏まえ、研究代表者・分担者がそれぞれ対象とする書壇と書人を焦点化し、個別の事例研究を深めることができた。こうした個別事例分析の集積により、前近代からの継承や、西洋式近代化の受容といった問題について、日・中・朝、それぞれの地域の特色が、より鮮明に描出されつつある。以上により、2019年度における研究の進捗は、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、本研究の最終年度として、国際シンポジウム「近代〈書壇〉の誕生」を開催する予定である。これにより、前3か年に亘り積み重ねてきた成果を体系的に整理し、披瀝することにより、本研究の所期の目的である近代東アジアの書壇形成の構造的な可視化、地図化を目指してゆくことにする。
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Research Products
(15 results)