2017 Fiscal Year Annual Research Report
木村蒹葭堂“知”のネットワークの解析-絵画・本草学資料から探る歴史文化の再構成-
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17H02293
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋爪 節也 大阪大学, 総合学術博物館, 教授 (70180817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 謙 大阪大学, 総合学術博物館, 特任講師(常勤) (00619281)
明尾 圭造 大阪商業大学, 付置研究所, その他 (30440960)
石田 惣 大阪市立自然史博物館, 学芸課, 学芸員 (50435880)
松浦 清 大阪工業大学, 工学部, 教授 (70192333)
塚腰 実 大阪市立自然史博物館, 学芸課, 主任学芸員 (80250257)
中谷 伸生 関西大学, 文学部, 教授 (90247891)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 木村蒹葭堂 / 本草学 / 博物学 / 江戸期 / 大坂 / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は蒹葭堂関連の絵画と本草学資料を博捜し、調査を進めてきた。蒹葭堂の活動実態を把握し、その学習姿勢のあり方と人脈の広がりを明らかにすることを最終目的としているが、採用初年度にして様々な資料を収集・分析できたことは大きな前進と言えよう。 ①大阪の個人所蔵者のもとで蒹葭堂作品の調査を実施し、総数にして40点近くを実見および写真撮影した。また、蒹葭堂と朝鮮通信使との関係に着目し、資料収集を行った。1764年に朝鮮通信使が日本に来聘すると、蒹葭堂ら混沌社の面々は朝鮮側の製述官・書記と交遊した。調査の過程で、蒹葭堂が朝鮮通信使に宛てた書状を新たに発見し、分析を進めている。 ②蒹葭堂の作画活動に多大な影響を与えた柳澤淇園(1703~1758)に関する展覧会「柳澤淇園―文雅の士・新奇の画家―」(於大和文華館、2017年10月7日~11月12日)に協力した。 ③本草学資料の中でも鉱物分野に注目し、国内外でのフィールドワークを実施した。国内では、大阪大学総合学術博物館所蔵の鉱物標本について、歴史的な背景を含めた調査・整理を実施し、4000点に上る標本およびそのラベルのリスト化と記録を実施した。また、石見銀山資料館においての継続的な調査を実施し、江戸期の冶金に関する本草学資料を発見した。特に石見銀山における研究においては、その成果が産経新聞(平成29年5月19日夕刊)において、1面で取り上げられたことをはじめとし、多数の新聞社やテレビ局において報道がなされた。本研究は、石見銀山資料館および島根県立古代出雲歴史博物館で開催された展覧会「世界遺産登録10周年記念 石見銀山展-銀が世界を変えた-」にて紹介がなされた。また、研究成果を速報として、1報の学術論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は本草学資料(鉱物標本を主とする)における調査について、新聞報道などがなされたことから、社会への成果の還元という点において、本研究の進捗状況は良好であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
①前年度の調査解析を継続する。撮影した画像の整理とデータベース化を行うことで、蒹葭堂自身が描いた絵画作品については、生涯にわたる画風の変遷についての考察を進める。蒹葭堂の収蔵した日本・中国・朝鮮他の書画資料については、当該の書画家についての調査と、資料の伝来を考証し、そこから浮かび上がる蒹葭堂の絵画作品への影響関係と、絵画を軸とした蒹葭堂のネットワークについて検討する。落款・印章などの真贋判断の材料となるデータも引き続き集積し、蒹葭堂の印譜一覧を更新する。 ②「奇貝図譜」、「薩州蟲品」、「諸国異魚図」等の博物図譜の収録内容について本草学的および生物学的観点から解析を継続する。同時に、各本草博物学資料の成立において蒹葭堂が関係を結んだ諸藩諸国の学者、好事家についてのリストを作成し、蒹葭堂の研究を支えた人的ネットワークを整理する。 ③「蒹葭堂蔵板」として蒹葭堂自身が発行した多数の書籍の著者である学者、文人との関係に加え、蒹葭堂のもとへ諸国の文人から送られてきた詩文をまとめた「寄題蒹葭堂詩文(全4巻)」(大阪大学総合学術博物館)を翻刻し、蒹葭堂が交流した人物を明らかにすることで、江戸中・後期の「文人」文化を読み解き、天下の台所と謳われた大坂固有の都市文化のあり方を踏まえながら、蒹葭堂の作画態度との影響関係を探る。 ④「文人画(南画)」と「本草学・博物学」関係の絵画資料との成立過程や表現内容の比較を行い、文系理系におけるヴィジュアル資料のもつ画像としての親近性あるいは差異についての検討を行う。 ⑤本草学、特に鉱物にまつわる部分について、研究成果の一部を紹介する展覧会を実施する。
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Research Products
(4 results)