2017 Fiscal Year Annual Research Report
Research on Conservation, Restoration and Archive Storage/Retreival System for Alternative Cinema
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17H02303
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Research Institution | Tohoku University of Art and Design |
Principal Investigator |
加藤 到 東北芸術工科大学, デザイン工学部, 教授 (90254854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
屋代 敏博 東北芸術工科大学, デザイン工学部, 准教授 (00453374)
阿部 宏慈 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (10167934)
馬場 一幸 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 研究員 (20621791)
根岸 吉太郎 東北芸術工科大学, 事務局, 理事長 (20626147)
藤本 かおり (田口かおり) 東海大学, 創造科学技術研究機構, 特任講師 (60739986)
石崎 武志 東北芸術工科大学, 文化財保存修復研究センター, 教授 (80212877)
北小路 隆志 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (90649831)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フィルムアーカイヴ / デジタルデータベース / 保存修復 / フィルムスキャナー / 映像著作権 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度は、大きくいって2つの実績を残したといえる。 1つは長野千秋監督作品「O氏シリーズ3部作」のデジタイズ作業に取り組んだことだ。実際に古いフィルム作品をデジタイズする過程において、著作権問題等も含め様々な現実的問題点が浮かび、それらをひとつずつ解決していくことが、今後の先行的事例となるはずであり、しっかりと記録に残していくことが重要だ。 2つ目は、山形国際ドキュメンタリー映画祭2017におけるシンポジウムの開催と、その内容が非常に斬新かつ充実した物であったということだ。かつて映像の保存・修復、アーカイヴィングについて多方面からの専門家を集めて、これほど充実した内容の話し合いが公開の場で行われたことはなかったのではと考える。このシンポジウムの内容は既に文字おこしができているが、最終報告書に掲載することを目指しての編集が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の初年度にあたる平成29年度は、具体的な小規模映画の保存・修復の調査研究のため、NPO法人ダンスアーカイヴ構想との共同により、長野千秋監督作品のフィルム調査とデジタル化を行なった。これによって、小規模映画フィルムの保存状況からデジタル化作業のプロセスとそのクオリティを把握し、現在、小規模映画がどのような状況下にあるかを具体的に考察することができた。 また、認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭事務局との共同により、2017年10月9日、山形国際ドキュメンタリー映画祭2017において、「イメージの時空間―映像アーカイヴの多角的展開にむけて」と題した国際シンポジウムを開催することができた。登壇者には、本研究の研究分担者である田口かおりのほか、アルゼナール映画・ビデオアート研究所共同ディレクターであるステファニー・シュルテ=ストラートハウス氏、映画研究者の堀潤之氏(関西大学文学部教授)、写真家・映像人類学者の港千尋氏(多摩美術大学美術学部教授)を招聘した。本シンポジウムでは、フィルムアーカイヴ活動の実践的な報告に留まらず、諸分野からの保存・修復に関わる問題提起から映像アーカイヴのもつ創造的な可能性まで、領域横断的な議論を世界的な視野で展開することができ、本研究課題をより掘り下げることとなった。 ここで得られた知見をもとに、次年度はさらに保存と修復及びデジタル化に関わる倫理的且つ理論的研究に取り組み、認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭事務局との共同のもと、小規模映画アーカイヴや映画ライブラリーの活用について、研究を深めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1年目の成果として、長野千秋監督作品「O氏シリーズ3部作」を、フィルムからデジタルデータに変換することができた。この作品を2019年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で公開することに向けて準備をしていく。 山形国際ドキュメンタリー映画祭2019における応募体制がデジタルデータ化されることに伴い、応募の利便性という技術的な問題のみならず、映画祭開催の根本的な目的をアーカイブ構築へ向けたものへシフトする可能性を探る。映画祭開催の理念とアーカイブ構築の理念とが合致することが、小規模映画の保存への近道になるはずだ。 最終年度に発行される報告書制作に向けて、2017映画祭におけるシンポジュウムの採録の編集作業はじめ、今年度中にできる作業をなるべく進めておく。デジタルデータによる映像アーカイブ構築における、著作権等の倫理的問題点を検討し実践的な運用方法とその課題を探る。 先行して行われている美術品をはじめとする映像以外の文化財の保存・修復の研究との比較から、その倫理・理論を応用しフィルム保存に適用できる可能性を見出す。特に修復活動における、オリジナルとは何か?という問いかけは、美術作品や歴史的文化財における事例が、重要な参考になってくると考えられる。 また、映像アーカイブは、ただ保存、管理するためだけのものではいけない。その映像データをどのように公開し利用を可能にしていくかも重要な課題である。国内外を含め既存の映像アーカイブの利用実態を調査し、積極的な活用システムを見つけだす。 昨年度から開発を進めてきた映像デジタル化のためのフィルムスキャナーを実際に作品全編を変換可能な実用レベルにし、試行実験を行う。
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Research Products
(10 results)