2017 Fiscal Year Annual Research Report
中世・近世在地文書の様式・機能の変遷と中世文書群の構造的変容に関する研究
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17H02390
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
坂田 聡 中央大学, 文学部, 教授 (20235154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薗部 寿樹 山形県立米沢女子短期大学, その他部局等, 教授 (10202144)
榎原 雅治 東京大学, 史料編纂所, 教授 (40160379)
岡野 友彦 皇學館大学, 文学部, 教授 (40278411)
小林 丈広 同志社大学, 文学部, 教授 (60467397)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 日本史 / 史料研究 / 中世・近世在地史料論 / 山国荘 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、中世から近世にかけての古文書が個々の家に連続して大量に残存しているという点において、他に類例を見ない場所である京都市右京区京北の山国・黒田地区(以下、山国荘地域と記す)をフィールドにとり、①中世地下文書と近世地方文書について、様式や機能の面での両者の連続面と断絶面を解明した上で、通時代的な在地文書論の構築を試みる、②中世地下文書がいかなる紆余曲折の過程を経て、どのよような選択基準にもとづき、文書群の構成を変えつつ今日まで伝来したのかを明らかにする、という2点を柱に据えて研究を進める。 本年度の研究実績としては、次の3点があげられる。第一に、夏と秋の2回、現地調査を実施し、旧鳥居村鳥居家文書、旧大野村河原林家文書、旧井戸村江口家文書、旧下黒田村井本家文書、旧黒田宮村菅河家文書、宮春日神社文書、上黒田春日神社文書等について、写真撮影や仮目録作成の作業を行った。 第二に、旧下黒田村井本家文書に関し、緻密な原本調査を行うことによって、筆跡から文書の発給者と執筆者が別人であることを突きとめるなど、そこから読み取れるさまざまな情報について考察を進めた。 第三に、山国荘地域の旧家から流出した、東京大学史料編纂所所蔵の横田文書について、同所にて原本調査を実施し、全文を翻刻した上で、その内容について考察した。また、横田家の本家が山国荘地域から転居した時期等も勘案しつつ、流出時期の推定も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
正確に記すと、(2)と(3)の中間あたりである。その理由としては、現地の家々や寺社に残存する古文書の量が思いのほか多く、年に2回の調査では、文書の写真撮影から仮目録作成に至る一連の作業が追いつかないということがあげられる。 この事態を改善するためには、①調査日数・調査回数を増やす、②調査者の人数を増員する、③調査に入る場所を、研究に支障をきたさない範囲で限定する、④作業内容を限定する、といった方策が思い浮かぶが、①と②は旅費の増額に直結し、事実上不可能なため、③と④を中心とした対応を考えている。具体的には、旧鳥居村鳥居家文書、旧大野村河原林家文書、旧井戸村江口家文書、旧下黒田村井本家文書、旧黒田宮村菅河家文書、山国神社文書、宮春日神社文書、上黒田春日神社文書の写真撮影の作業を優先的に行い、他の家々や寺社の文書の調査は可能な範囲で行うことにする。また、文書の仮目録作成作業に関しては、現地での作業だけでなく、大学に戻ってからの作業を増やすことによって、作業の遅れを取り戻す。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)山国荘地域の古文書調査…夏(4泊5日)と秋(2泊3日)の2回実施。家別・寺社別文書班ごとに分かれて古文書調査を実施する。具体的には、各々の現状記録をとった上で、未整理文書群・新出 文書群の概要調査、文書の写真撮影、仮目録作成等の作業に当たる。今後は本年度に引き続き、旧井戸村江口家文書、旧大野村河原林家文書、旧下黒田村井本家文書、旧黒田宮村菅河家文書、宮春日神社文書、上黒田春日神社文書等の調査を行うほか、山国神社文書等についても同様の作業を実施する。仮目録作成の際には1960年代前半に同志社大学人文科学研究所が実施した調査のおりに作成された文書目録、1980年代後半~90年代前半に郷土史家湯口進が実施した調査のおりに作成された文書目録を先行業績として参照するが、これらの調査によって文書群編成に手が加えられた可能性は高く、各々がいかなる基準にもとづいて文書を類別したかという点にも留意して作業を進める。 (2)文書の原本調査にもとづく史料学的考察。本年度は、旧下黒田村井本家文書中の、主に中世から近世前期にかけての文書について、緻密な原本調査を行った上で、そこから読み取れるさまざまな情報をとりまとめたが、今後は井本家文書のほか、旧鳥居村鳥居家文書、旧井戸村江口家文書の原本調査も実施する。 (3)同志社大学人文科学研究所における調査。同所に寄託・寄贈された山国荘地域の古文書につき、 調査者がいかなる意図・基準にもとづいて既存の文書群の構成に手を加えたのかということを推察する。 (4)流出文書の所在調査。外部に流出した山国荘地域の文書群について、さまざまな方法を駆使することにより、現在の所在場所を追跡・確認した上で 、各々の流出元と流出時期を解明し、「文書群構成の時間的変化」を検討する際の材料とする。
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Research Products
(3 results)