2017 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of Neolithization and Urbanization in West Asia
Project/Area Number |
17H02412
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
常木 晃 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70192648)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 伸一 中部大学, 人文学部, 准教授 (50392551)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 新石器化 / 都市化 / 農耕化 / 文明 / テル・エル・ケルク遺跡 / タペ・サンギ・チャハマック遺跡 / カラート・サイド・アハマダン遺跡 / チャルモ遺跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、1)テル・エル・ケルク遺跡(シリア)の発掘調査成果のとりまとめ、2)タペ・サンギ・チャハマック遺跡(イラン)の発掘調査成果のとりまとめ、3)カラート・サイド・アハマダン遺跡(イラク)の整理研究補足調査をそれぞれ実施しました。 1)テル・エル・ケルク遺跡:テル・エル・ケルク遺跡の土器新石器時代墓地は現在のところ西アジアで最古の屋外型共同墓地であり、240体以上の人骨が検出されています。主に2007年~2010年に発掘調査を実施したこの共同墓地の最終報告書刊行に向けて、資料のデジタルデータ化を進め、考古学・形質人類学・年代測定学・アイソトープ学など各研究分野の専門家が研究成果の取りまとめを行いました。この墓地について研究論文を2本出版し、最終報告書刊行について、現在英国の出版社と交渉中です。 2)タペ・サンギ・チャハマック遺跡:既に出土遺物や人骨などの整理研究は、各研究者によりほぼ終了しました。また、1970年代に発掘された遺構の図面や写真の整理・研究を進め、土器や黒曜石製石器、人骨・動物骨に対する自然科学的研究(SEMによる焼成温度推定やpXRFによる産地同定、小児人骨の詳細死亡年齢推定など)を実施するとともに、研究報告書用にこれまで整理した資料のデジタルデータ化を行いました。動物骨や植物遺存体の研究も専門研究者により進行しています。 カラート・サイド・アハマダン遺跡:夏季休業期間を利用して、平成26-27年度に実施した発掘調査成果の整理研究をイラク・クルディスタンのスレマニ(スレイマニア)において実施するとともに、ザグロス地域の新石器化研究深化ため、スレマニ地区のチャルモ(ジャルモ)遺跡、トゥルカカ遺跡で調査研究を実施しました。また遺物サンプルと出土炭化物をスレマニ(スレイマニア)文化財局の許可を得て日本に持ち帰り、年代測定や産地同定を進めました。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は科学研究費補助金などを得て、30年以上にわたり西アジアのハートランドというべきシリア、イラン、イラクにおいて、遺跡の発掘調査を通じて農耕開始から都市的な巨大集落の出現までの歴史プロセスを研究してきました。その結果、従来の定説とは異なる様々な仮説を提示しています。本研究では、研究代表者が直接調査や整理研究に携わってきた、シリアのテル・エル・ケルク遺跡、イランのタペ・サンギ・チャハマック遺跡、イラクのカラート・サイド・アハマダン遺跡などの調査成果及び出土遺物の整理研究をさらに進めてこれらの遺跡の最終報告書を完成させ、肥沃な三日月地帯東西での農耕化と都市化についての新仮説の根拠となる証拠を具体的に提示することが目的です。したがって、本研究ではこれら3遺跡の最終報告書を刊行することが必須となります。3遺跡の内、テル・エル・ケルク遺跡の共同墓地については、ほぼ研究成果の整理が終わり、最終報告書刊行について英国の出版社と現在話し合いを行っております。タペ・サンギ・チャハマック遺跡遺跡の整理についても、現在研究成果の英文ブラッシュアップが進行中で、近々最終報告書刊行に向けての話し合いに入ります。カラート・サイド・アハマダン遺跡については、現地での整理研究、比較研究を鋭意進めています。
|
Strategy for Future Research Activity |
シリア、イラン、イラクに所在する3つの新石器時代遺跡の最終報告書刊行に向けて、現在行っている整理研究作業を鋭意進めていきます。最終報告書に向けての整理研究で新たに判明した事実や研究成果などについて、個別に研究論文を出版していくこともありますが(平成29年度はテル・エル・ケルクの共同墓地に関する2本の研究論文を発表しています)、最終的な目標はあくまでも総括的な最終報告書刊行においています。したがって、この最終目標に向かって、精力を尽くしていきます。
|
Research Products
(18 results)