2018 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of Neolithization and Urbanization in West Asia
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17H02412
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
常木 晃 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70192648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 伸一 中部大学, 人文学部, 准教授 (50392551)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 新石器化 / 農耕化 / 都市化 / 文明 / テル・エル・ケルク / タペ・サンギ・チャフマック / カラート・サイド・アハマダン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまでの申請者が行ってきた西アジアにおける新石器化と都市化の研究成果を取りまとめることにあります。以下各項目の研究実施状況の概要です。 シリア:テル・エル・ケルク遺跡:新石器化から集落の複雑化、巨大化の解明を目的に行ってきた調査で、平成30度は最終報告書出版準備をほぼ整え終わり、現在最終報告書Excavations at Tell el-KerkhシリーズのVol.1としてNeolithic Cemeteryを英国の出版社より刊行する最終段階に入っています。 イラン:タペ・サンギ・チャハマック遺跡:西アジアから中央アジアへと広がる新石器化の鍵を握る遺跡であり、平成30年度は、1970年代に発掘された遺構の図面や写真の整理・研究を進め、遺構全体と、出土遺物のうち土器や骨角器、石器、土偶、埋葬人骨などの整理を終えることができました。またこれらに加えて、土器や黒曜石製石器、人骨や動物骨に対する自然科学的研究(SEMによる焼成温度推定やpXRFによる産地同定)を実施しており、それぞれに研究が終了しつつあります。現在本報告書Excavations at Tappeh Sang-e Chakhmaq出版に向け最終段階に入っており、最終年度中の出版を目指しています。 イラク:カラート・サイド・アハマダン遺跡:肥沃な三日月地帯の東部であるザグロス地域の新石器化の様相を探るために、平成30年度同地域で最も重要で学史的にも大変著名なチャルモ遺跡の調査とチャルモ周辺の環境科学調査を実施しました。また同年度ミュンヘン大学で開催された第11回ICAANEで、カラート・サイド・アハマダンやトゥルカカ、チャルモ遺跡の研究成果をポスター発表しています。イラク・クルディスタン地域政府スレマニ(スレイマニア)文化財局と協力し、すでに発掘調査した遺物の整理研究、補足調査、比較研究を実施しています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的の一つである新石器化研究に関して、特に肥沃な三日月地帯東部に当たるザグロス地域での新石器化研究については、カラート・サイド・アハマダン遺跡での研究、トゥルカカ、チャルモ遺跡の発掘調査と環境科学調査を実施することができ、これまでの山麓地帯の天水農耕とはやや異なる、山地前衛丘陵地帯の帯水農耕の可能性を指摘するなど、いくつかの新仮説を提示することができています。この仮説については、これからさらに環境科学調査、土壌調査、試掘調査などを行って、補強していく必要があります。 本研究の主体である、シリア北西部での新石器化―社会の複雑化の鍵を握るテル・エル・ケルク遺跡の発掘報告書に関しては、土器新石器時代の墓地編について、出版のめどが立ち、現在英国の出版社と交渉中ですが、平成30年度中であった当初の刊行予定からはやや遅れています。これは、膨大な資料の整理と図面化に思ったより多くの時間がかかってしまっていることが大きな原因です。デジタルトレースに要する時間に関しても、当初の想定よりも時間がかかりました。また、イラン東北部に位置し、西アジアから中央アジア方面への新石器化の鍵を握るタペ・サンギ・チャハマック遺跡の発掘報告書の刊行については、1970年代の発掘調査時の遺物台帳の一部が存在せず、遺物との照合が不可能なものがあったために、その部分の整理研究が滞り、執筆に想定以上の時間がかかっていて、予定の出版計画通りには進行しなかった現実があります。鋭意整理に努力しており、計画の改善を図っています。
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Strategy for Future Research Activity |
肥沃な三日月地帯東部ザグロス地域での新石器化研究に関しては、このまま特に環境科学調査(土壌や水質の調査など)を継続し、山地前衛丘陵地帯での帯水農耕仮説を立証していくべく努めます。これについては、すでに日本語ではいくつかの論考を発表していますが、英文の雑誌論文としても投稿し受理されており、平成31年中に刊行される予定です。トゥルカカ遺跡の調査報告は、すでに英文で出版していますが、最終年度中にはチャルモ遺跡の調査報告も出版する予定です。 シリアのテル・エル・ケルク遺跡およびイランのタペ・サンギ・チャハマック遺跡の最終報告書については、最終年度中の出版を目指して、懸命な努力を続けています。出版計画を実現するためには、一にも二にも鋭意努力が必要であり、本出版計画に関わる国内外の研究者群および出版予定の英国の出版社とも密接に連絡を取りあい、進めていきます。
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Research Products
(13 results)