2017 Fiscal Year Annual Research Report
Early state formation in the Indochina peninsula: an approach from the Tra Kieu site in Vietnam.
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17H02413
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
山形 眞理子 岡山理科大学, 経営学部, 教授 (90409582)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 純子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (90275967)
重枝 豊 日本大学, 理工学部, 教授 (30287586)
鈴木 朋美 奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 技師 (00778673)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 考古学 / ベトナム / チャーキュウ遺跡 / オケオ遺跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はインドシナ半島の初期国家・林邑の王都に比定されるベトナム中部・チャーキュウ遺跡を主たる研究対象とする。チャーキュウ遺跡の研究に際し、同じくインドシナ半島に勃興した初期国家・扶南の外港に比定されるベトナム南部・オケオ遺跡との比較を重視している。平成29年度には両遺跡において調査を実施した。 まず林邑に関しては、チャーキュウ遺跡現地の博物館と教会が収蔵している出土瓦の悉皆調査を実施した。その過程で、林邑(チャンパ)の宗教的中心であったミーソン遺跡(ユネスコ世界遺産)において、ベトナムによる修復事業に先立って行われた数年前の発掘で大量の瓦が出土していたことを確認した。ミーソン管理委員会の許可を得て、それらの初歩的調査を実施することができた。瓦は8世紀初頭の建立とされるミーソンE1祠堂に由来する可能性があり、チャーキュウと同様に人面(鬼面)を瓦当紋様とする。ミーソンE1はチャンパ建築史・美術史上の画期となった重要な建物である。チャーキュウとの比較にもとづいてミーソンE1瓦の年代と、実際に葺かれた手法を追求することは、林邑史の解明に新たな視点を導入することにつながる。考古学的には山形と研究分担者・鈴木朋美が、建築史と美術史の方面からは研究分担者・重枝豊と研究協力者チャン・キー・フォンが、ミーソンE1の研究を深化させる計画である。 オケオ遺跡では現在、国家的調査研究プロジェクトが進行中である。その一環として、ベトナム南部社会科学院がオケオ遺跡で発掘調査を実施中であり、本科研は彼らの調査と連携している。研究分担者・久保純子は発掘予定地点で土壌堆積物分析のためのボーリング調査を実施し、研究協力者・中山誠二はオケオ遺跡出土土器に残された植物圧痕のレプリカ採取と分析を実施した。山形は出土土器と瓦について、チャーキュウ遺跡などのベトナム中部出土遺物との比較をもとに編年研究に着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度の調査研究については、ミーソン遺跡E1祠堂出土とされる瓦の調査など、思いがけず新たな展開があった。しかし、ここで「やや遅れている」とした理由は、本科研費調査のベトナム側共同研究機関であるベトナム南部社会科学院が、国家的事業としてのオケオ遺跡調査プロジェクトに専念していることに起因する。私たちがベトナム中部でチャーキュウ遺跡の調査を実施するために、長期間にわたって南部社会科学院から考古学者を派遣してもらうことは難しい状況にある。そのため、本年度はチャーキュウ遺跡において発掘や測量などのベトナム側人員を多く必要とする調査ではなく、遺物の資料調査を優先した。
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Strategy for Future Research Activity |
ベトナム南部でオケオ遺跡の発掘調査が進行中であることは、本科研費研究にとって非常に有意義である。私たちもオケオの現地調査に参加し、連携することによって、考古学的コンテクストに裏付けられた確実なデータを主体的に利用できることになった。そのデータをもとに、オケオ遺跡とチャーキュウ遺跡との比較研究を推進する。研究の実施にあたってはベトナム側共同研究機関と協議しながら、調査の内容と日程を調整していく。ベトナム中部ではミーソン遺跡から瓦が大量に出土していることを受けて、チャーキュウ遺跡とミーソン遺跡の年代的関係をつまびらかにする研究に進む必要がある。この研究は林邑の「インド化」プロセスの解明に寄与する可能性がある。今後も考古学、古環境学、建築史を含む様々な切り口から、インドシナ半島の二つの初期国家―林邑と扶南―を包摂する古代史研究の進展に貢献する。
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Research Products
(7 results)