2018 Fiscal Year Annual Research Report
Early state formation in the Indochina peninsula: an approach from the Tra Kieu site in Vietnam.
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17H02413
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
山形 眞理子 岡山理科大学, 経営学部, 教授 (90409582)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 朋美 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任技師 (00778673)
重枝 豊 日本大学, 理工学部, 教授 (30287586)
久保 純子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (90275967)
中山 誠二 帝京大学, 付置研究所, 教授 (60574142)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 考古学 / ベトナム / チャーキュウ遺跡 / オケオ遺跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度にはベトナムのクァンナム省とアンザン省において現地調査を実施した。その具体的内容、意義、重要性は以下の通りである。 (1)研究代表者・山形と研究分担者・鈴木がベトナム人研究協力者とともに、クァンナム省の世界遺産ミーソン遺跡E1祠堂周辺から出土した瓦の資料調査を実施した。ミーソンE1は8世紀初頭の建立とされ、人面紋瓦当が出土しているが、チャーキュウ遺跡の人面紋瓦当とは意匠、形態、瓦の葺き方に違いが認められた。インドシナ半島の古代瓦研究を大きく前進させる資料である。(2)チャーキュウ遺跡内の水田で農民が耕起を行い、遺跡を破壊した箇所から獅子像彫刻2点を含む大量の遺物が出土した。美術史家によれば獅子像はチャンパ彫刻でも初期の作例であり6~7世紀にさかのぼる。チャンパ考古学において編年上の空白となっている時代であるため、山形と鈴木が遺物群の整理と分析を進めている。(3)研究分担者・中山がチャーキュウ遺跡とクァンナム省博物館において植物圧痕レプリカの採取を行った。日本国内では平成29年度にベトナム南部で採取した圧痕レプリカを走査電子顕微鏡観察する一方、現生イネの野生種と栽培種の籾構造の違いに関する検討を行い、研究論文の作成を行った。(4)研究分担者・重枝がミーソン遺跡における近年の修復事例を調査し、その手法に対する検証を行った。ベトナムとインドのチームが進めている修復は観光客のための整備を主眼としており、研究の進展がほとんどみられない現状を整理した。(5)研究分担者・久保は日本において、アンザン省オケオ遺跡で平成29年度に採取した堆積物試料の分析を進め、3~4世紀の年代測定値を得た。オケオの都城外でおこなったハンドオーガーにより、深度4.85mで約16000年前(更新世)の年代測定値も得られた。昨年度にはオケオの古代運河沿いの発掘地点において試料採取と断面観察を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度にチャーキュウ遺跡東城壁の小規模な再発掘をベトナム側に提案したが、実現に至らなかった。その理由は、共同研究機関であるベトナム南部社会科学院がオケオ遺跡の発掘調査を実施中であるため、別遺跡の調査のために彼らが割くことができる日程と人員が限られる。さらには旧正月後の半月間は土地を掘り起こすことを忌避する慣習もあり、研究代表者が大学業務の合間をぬってベトナムに渡航できる日程と、ベトナム側の都合を合致させることができなかった。さらに、昨年秋にチャーキュウ遺跡内の水田で農民による遺跡破壊(水田の深い耕起)が発生したため、現地行政機関が遺跡の現況を変えることに敏感になっているという現状も影響した。発掘調査の実施を見送ったが、チャーキュウ遺跡、ミーソン遺跡、オケオ遺跡において研究を前進させるべき課題は山積しており、現時点で実施可能な調査を優先しながら本研究課題に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の方向性について、以下のように考えている。(1)最近2年の間に思いがけない新出資料があったことを踏まえ、それらの整理と研究、報告を行う。すなわちミーソン遺跡Eグループならびにチャーキュウ遺跡内水田の出土資料であり、いずれも考古学的研究が進んでいない後5世紀から8世紀に属する可能性が高い貴重な資料であると予測している。(2)ミーソン遺跡管理委員会と我々の調査団との連携が深まっていることから、ミーソン遺跡とチャーキュウ遺跡を関連付けるような研究と博物館展示、さらにはミーソン遺跡の修復手法などの問題について、ミーソン遺跡管理委員会に提言を行っていきたい。(3)チャーキュウ遺跡において発掘調査の実施が困難である状況を受け入れ、城壁外部を巡っていた環濠の存在を確かめることを当面の目的とし、ボーリング調査を実施する。環濠は城壁の建設年代や手法と密接に関連するため、その存在について議論するための基本情報を得ることを目指す。(4)ベトナム側共同研究機関によるオケオ遺跡の発掘調査が2019年末まで継続する。我々の調査団としてはオケオ遺跡とチャーキュウ遺跡の土器比較研究、土壌堆積物分析にもとづく旧水路と遺跡との関連、植物圧痕分析、オケオ遺跡の大規模レンガ建築遺構に関する建築史学的考察など、複数の研究分野でベトナム側と協力し、研究成果をあげていく方針である。(5)本研究課題の成果報告を刊行する。
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Research Products
(12 results)
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[Book] 『新博物館園論』2019
Author(s)
小林秀司・星野卓二・徳澤啓一編(山形眞理子)
Total Pages
220-236.
Publisher
同成社
ISBN
978-4-88621-817-9