2019 Fiscal Year Annual Research Report
古代における谷底平野および周辺丘陵部の開発と宗教施設の展開に関する研究
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17H02414
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
梶原 義実 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (80335182)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三舟 隆之 東京医療保健大学, 医療保健学部, 教授 (20418586)
尾野 善裕 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (40280531)
古尾谷 知浩 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (70280609)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 考古学 / 古代史 / 古代寺院 / 窯業生産 / 集落遺跡 / 歴史考古学 / 手工業生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の研究・事業をおこなった。 ・「信仰」班では、豊田市教育委員会および協力者の森泰通の協力をうけ、2019年8月19日から9月6日にかけて、豊田市伊保廃寺(伊保古瓦出土地)の発掘調査を継続した。昨年度には6トレンチにおいて、寺院関連遺構とも想定される瓦遺構および溝状遺構を検出しており、本年度はその広がりを確認するため、周囲に6m×6mのトレンチ(7トレンチ)を設定した。また、南方への遺構の広がりを確認するため、南へ1m×25mの長いトレンチ(8トレンチ)を設定した。発掘調査の結果、瓦溜自体は中世の遺物も混じる二次堆積であることが確認されたものの、地山を削り出し端部に平瓦を貼り付けた瓦積基壇および、その外側に白色粘質土を貼り付け改修した2時期の基壇が検出された。8月30日には第3回の科研関係者会議を豊田市でおこない、発掘調査の現地で所見を交換しつつ、今後の方針についての打ち合わせをおこなった。8月31日には、発掘調査成果を市民に公開するための現地説明会を開催し、30人以上の参加者を得た。また、地域社会における在地信仰と仏教との融合について、代表者の梶原が諸論を上梓した。 ・「生産」班では、協力者の大西遼を中心に、愛知県陶磁美術館所蔵資料をはじめ東海一円の須恵器・灰釉陶器資料のデータ化が進められた。また協力者の井上隼多を中心に、須恵器編年への人工知能技術導入へ向けての試論が情報考古学会で報告された。分担者の尾野を中心とした尾北窯関係のシンポジウムはコロナ禍のため延期となったが、準備は完了しており2020年度中には開催予定である。 ・「生活」班では、分担者の三舟隆之・古尾谷知浩、協力者の永井邦仁を中心に、生産・宗教と権力構造や地域社会との関係性についての諸論が上梓された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
伊保廃寺の発掘調査において、はじめて基壇状遺構を検出したことは、大きな成果である。来年度はさらにその成果を拡充していきたい。 窯業関連においても、本年度はシンポジウムこそ開催できなかったものの、一次資料の蓄積は着実に進められており、またそれを解析するための人工知能のプログラミングにも着手している。 東山窯出土遺物の分析は本年度は実施できなかったので、来年度の報告書刊行を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を承け、来年度以降は以下のとおり研究を遂行する。 ・伊保廃寺の発掘調査:本年度の発掘調査成果を承けつつ、とくに瓦積基壇の西側への延長および南西端の検出を目指すべく、調査を継続していく。また改修後の基壇の規模も確認していく。作業にあたっては、表土掘削等は専門業者を入れ、大学院生等を調査・整理にあたっての補佐員として雇用しつつおこなっていく。また、発掘調査の状況については、随時現地説明会を開催し、成果の地元住民への還元を図り、また発掘調査事業への理解を求めていく。また成果について、文献史学の立場から三舟、古尾谷らの助言をうける。 ・東山窯出土遺物の分析整理:「生産」チームの梶原を中心に、研究協力者の永井、大西の助力をうけつつ継続しておこなっていく。名古屋大学考古学研究室がおこなった東山39号窯の調査成果についての報告書刊行を目指すことと、協力者の井上隼多を中心とした人工知能による猿投窯編年の再構成を二本柱とする。 ・須恵器生産に関するシンポジウムの開催:「生産」チームの尾野を中心に、梶原、古尾谷および研究協力者の大西、森などが関わりつつ、継続しておこなっていく。尾野を中心に猿投窯須恵器に関する基礎資料のデータ収集をおこない、まずは尾北窯を、次いで先述の東山窯出土遺物や、協力者の大塚友恵の助力も受けつつ、尾張型埴輪など特殊品生産に関しても、シンポジウム開催をめざし、調査研究の成果を学会に還元する。
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