2017 Fiscal Year Annual Research Report
東北地方における古墳時代中期埋葬施設と埋葬人骨の研究
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17H02418
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
辻 秀人 東北学院大学, 文学部, 教授 (30244966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚本 敏夫 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (30241269)
奈良 貴史 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (30271894)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 古墳時代中期埋葬施設 / 首長墓 / 被葬者の全身骨 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、計画通り8~9月に灰塚山古墳第2主体部の箱式石棺の発掘調査を実施するとともに3月に石棺の構造調査を合わせて行った。石棺のの調査では当初の想定通り盗掘がなく完全な状態での埋葬状況が確認された。石棺の蓋を開封したところ、石棺蓋内面、側石、底石すべてが赤彩されており被葬者は真っ赤な世界の中に安置されていた。副葬品は当初想定された馬具等ではなく、鉄剣が2点確認された。石棺内部からは当初想定通り人骨が出土した。人骨の保存状態は良好で、一部を欠損するがほぼ全身骨が残されていた。分担研究者奈良貴史とともに慎重に取り上げ、良好な資料となった。地域の首長墓と目される大型古墳の被葬者の全身骨は全国でも数例を数える程度で大変貴重な例となった。また、3月に実施した石棺の構造調査では石棺の構造、構築過程を明らかにすることができた。ただ、第1主体部との前後関係は土層観察からは確定できなかった。 発掘調査の実施にともない、石棺内の朱の成分分析を実施するとともに放射性炭素年代測定等の各種分析の試料採取を実施した。出土人骨に関しては人類学的検討を進めるとともに、人骨の放射性炭素年代測定、安定同位体分析、復顔等の各種分析を進めている。また、幸いなことにDNAの採取に成功し、目下分析を進めている。 灰塚山古墳で確認された埋葬施設はいずれも古墳時代中期に属する。東北地方で古墳時代中期の古墳の全容と埋葬施設、副葬品がすべて確認されたことはこれまでになく、本例は古墳時代中期の埋葬施設を示す大変貴重な例となり、今後の当該時期を研究するための基準資料を提供することになった。また、全国的にも貴重な首長墓の被葬者の人骨は最新の人類学的研究と各種分析を行うことによって、古墳時代の首長の姿を考える重要な情報を提供することが可能となるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
石棺の開封調査を実施し、副葬品、埋葬人骨を検出するとともに、各種の分析も実施または試料採取の上分析を進めているところで概ね平成29年度に予定していた研究内容は実現できたと考えている。 一方、検出した埋葬人骨は当初の想定を越えて保存状況良好であったため、急遽復顔を実施することにし、目下進行中である。また、灰塚山古墳の地主との関係で発掘調査を継続することが難しく、当初30年度に予定していた石棺の構造調査を29年度内に実施し、完了させた。
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Strategy for Future Research Activity |
考古学の立場からは、古墳時代中期の墳丘構造、埋葬施設、副葬品が明らかになったことをうけてそれぞれの要素の比較検討を行う。たとえば灰塚山古墳の墳丘企画、複雑な構造をもつ石棺の類例の探索、鏡、鉄鏃などの特質、系譜、年代などについて検討を加え、灰塚山古墳の歴史的な位置づけを探るため資料調査を実施する。 人類学の立場からは、各種分析の成果をまとめて、被葬者像を描き出すとともにこれまで出土している埋葬人骨の類例を探索し、比較検討することによって灰塚山人骨の特質を明らかにするため資料調査を実施する。 さらに考古学的な知見と人類学的な認識を綜合して古墳時代中期の首長の様相を追求する。 なお、研究成果の中間的な報告を学会等で行う予定である。
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Research Products
(7 results)