2019 Fiscal Year Annual Research Report
西日本における地方窯業生産の研究-古墳時代・古代から中世へ-
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17H02420
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
亀田 修一 岡山理科大学, 生物地球学部, 教授 (10140485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 真二 岡山理科大学, 生物地球学部, 准教授 (60359271)
白石 純 岡山理科大学, 生物地球学部, 教授 (70434983)
畠山 唯達 岡山理科大学, 付置研究所, 教授 (80368612)
徳澤 啓一 岡山理科大学, 総合情報学部, 教授 (90388918)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 窯跡 / 須恵器 / 胎土分析 / 磁気探査 |
Outline of Annual Research Achievements |
備前邑久窯跡群は中四国最大の須恵器窯跡群である。しかしほとんど発掘調査がなされておらず、窯構造はよくわからず、遺物研究も不十分であった。そこで申請者らは平成22~25年度の科学研究費補助金による調査とその後の調査において3基の窯跡を発掘した。 そして、今回の科学研究費補助金による平成29年度の追加発掘調査によって、8世紀後半の佐山東山窯跡が、現時点において奈良時代の須恵器窯跡としは日本列島最大であることを確認した。その大型窯である理由として、須恵器の貢納国である備前国から、都である平城京に大型甕をはじめとして多くのやきものを送るため、一度に多くのやきものを生産する必要があったものと考えた。遺物面においても、貴重な文字資料、「官」に関わるものなどを検出した。 平成30年度からはこれまでの邑久窯跡群における調査の空白期である8世紀前半の窯跡として、庄田工田窯跡の発掘調査を開始した。窯本体に関しては未確認であるが、灰原の調査を行い、高級品である「蹄脚硯」という陶硯を含む「官」に関わる資料を検出できた。 また、本科学研究費補助金による研究のもう一つの大きな柱である自然科学的な手法による調査・研究では、胎土分析によって須恵器流通の広がりを継続的に検討していたが、平成31年度には邑久窯跡群で生産された鴟尾が海を渡って香川県にまで運ばれていたことを確認できた。さらに、今回の研究費で購入した磁気探査装置を使って、窯跡の位置検討を進めている。 以上のように、これまでの調査・研究成果をもとに、奈良時代の須恵器窯跡として最大規模と推測される窯跡が備前邑久窯跡群にあることを確認するとともに、空白期の8世紀前半の窯跡の新たな発掘調査を進めている。そして、生産物の流通のあり方もより追求でき、さらに新たな窯跡の探査も着実に進めることができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも記したように、1年目に発掘調査した佐山東山窯跡が、奈良時代の須恵器窯跡としては現時点で日本列島最大である可能性が提示でき、日本列島の須恵器生産、須恵器窯跡研究に大きく寄与したものと考えている。2年目からは場所を少し移し、邑久窯跡群の発掘調査研究の空白期である8世紀前半の庄田工田窯跡の発掘調査を始めた。残念ながら現時点では窯跡本体を検出できていないが、遺物面では高級品である「蹄脚硯」が岡山県内では初めて窯跡で出土し、この窯跡と当時の「備前国」との関係をより説明できるようになった。 また、自然科学的手法による調査・研究も、胎土分析では高さが1mを超える鴟尾が海を越えて香川県に運ばれていたことを初めて確認できた。さらに、考古地磁気関連では、窯の場所の確認調査、考古地磁気による年代測定のモデルづくりも着実に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで述べてきたように、本研究はおおむね順調に進展している。平成30年度からはこれまで発掘調査してきた8世紀後半の佐山東山窯跡よりやや古い、8世紀前半の庄田工田窯跡の発掘調査を開始した。 残念ながら窯構造に関しては、現時点で窯本体が未検出であり、よくわからない。本年度が最終年度であり、さらに追及して発見し、いろいろと検討したいと考えている。また、生産されている須恵器の器種や形態については、これまでも検討してきたが、本年度は最終年度であり、その総合的なまとめを行う予定である。 自然科学的手法による胎土分析や地磁気関連調査は、備前邑久窯跡群の資料をさらに追及するとともに、関連遺跡の資料についてもさらに調査・研究していく予定である。 そして、全体をまとめた報告書を刊行する予定である。
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Research Products
(23 results)