2018 Fiscal Year Annual Research Report
空間的同化論およびヘテロローカリズム論からみた在留外国人の居住地の地理学的検討
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17H02426
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
石川 義孝 帝京大学, 経済学部, 教授 (30115787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 清海 立正大学, 地球環境科学部, 教授 (00166662)
高畑 幸 静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (50382007)
福本 拓 宮崎産業経営大学, 法学部, 准教授 (50456810)
片岡 博美 近畿大学, 経済学部, 教授 (70432226)
花岡 和聖 立命館大学, 文学部, 准教授 (90454511)
竹下 修子 愛知学院大学, 文学部, 教授 (60454360)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 外国人 / エスニック集団 / 居住地選択 / 集住地 / 個票データ / 社会的ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書で述べた2018年度の研究実施計画は、1)既往研究のレビュー、2)外国人の居住地の調査、3)外国人地図帳の刊行準備、の3点であった。 1)については、移民の集住地やセグリゲーションに関する、主に米国における既往文献のレビュー作業を行った。とりわけ、科研の研究課題に登場している空間的同化論とヘテロローカリズム論に焦点を置いたが、同国における集住地形成に関する新しい枠組みの誕生には、1965年の移民法改正による移民の多様化という事態が重要なことが明らかになった。このレビュー論文は、2019年度中に刊行の予定である。 2)については、国内における外国人の居住地選択や集住地形成に関する調査を継続した。具体的なエスニック集団として、韓国・朝鮮、中国、フィリピン、ブラジル、トルコの5国籍の在留外国人を対象に、国内での集住地形成やその変化を検討するとともに、それらを促す要因を、空間的同化論やヘテロローカリズム論の日本での経験的妥当性を念頭に置きつつ、考察した。 3)については、2011年3月に刊行した石川義孝編『地図でみる日本の外国人』(ナカニシヤ出版)の改訂版の刊行のために、政府統計の総合窓口から入手可能な外国人データや、総務省統計局から提供いただいた2015年国勢調査の外国人個票データも使って、最新データによって更新した地図を作成した。さらに、新たに2項目を追加して、この地図帳の改訂版を2019年1月に刊行した。初版と比較すると、わずか8年しか経過していないにもかかわらず、世界経済危機や地方圏での労働力不足の深刻化などを反映した、様々な興味深い知見を得た。 4)以上の他に、2018年9月28日に、福岡で開催された世界社会科学フォーラムにおいて、「移民の社会的包摂の現状」と題するセッションを持ち、本科研によって内外から招聘した4名が発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年継続の本計画では、基本的に、前半の2年間で外国人地図帳の改訂版の刊行、後半の2年間で、在留外国人の居住地選択に関する包括的な説明的枠組みの検討や成果の刊行を予定している。このうち、前半の目標であった改訂版の刊行は無事終了し、当初の目標を実現できた。また、海外、とりわけ米国におけるエスニック集団の集住地形成やその変化に関する既往文献のレビューも終えた。以上を念頭に置くと、現在までの進捗状況は、全体的にみると、おおむね順調と言っていいであろう。 今後は、事例集住地での調査や個票データの入手・分析に力を入れ、日本を舞台としたエスニック集団の集住地形成を説明する枠組みの構築をめざす。なお、当初予期していない事態、例えば、国勢調査の個票データを得られないという状況となった場合には、事例集住地における調査を中心とした成果のとりまとめを考えたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度における研究は、以下の3つを柱として進める予定である。 1)外国人集住地での調査:エスニック集団の集住地形成に関する包括的な説明的枠組みの検討のため、前年度からの調査を継続する。韓国・朝鮮、中国、フィリピン、ブラジル、トルコの5国籍の在留外国人ごとに1名の分担者が、1~2の事例集住地を担当する。調査は、外国人や関係者への聞き取りによって行い、既往研究の成果も適宜活用する。主な質問項目は、来日時期、就労経験、居住歴、家族形成などである。 2)外国人個票データの入手と分析:上記1)の調査と並行し、総務省統計局に2015年国勢調査の外国人個票データの提供を申請する。データの提供を受けた後は、各国籍の事例集住地ごとに、年齢、性別、滞在年数、職業、居住地と就業地の距離、国際結婚比率、などに関するデータを分析する。 3)成果のとりまとめと英文図書の刊行準備:上記の1)と2)の作業から得られた知見を踏まえ、日本における外国人集住地の形成に関して、どのような説明的枠組みが適切かの暫定的な結論を探る。こうした作業に基づいた成果をまとめ、最終的な成果の刊行物である英文図書に採録する各章の原稿作成に着手する。
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Research Products
(15 results)