2019 Fiscal Year Annual Research Report
朝鮮海出漁の歴史とその文化的影響の研究―イワシをめぐる韓国の民俗変化
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17H02440
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
松田 睦彦 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (40554415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
昆 政明 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (10747182)
川島 秀一 東北大学, 災害科学国際研究所, シニア研究員 (30639878)
磯本 宏紀 徳島県立博物館, その他部局等, 学芸係長 (50372230)
島立 理子 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (00332354)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 朝鮮海出漁 / カタクチイワシ / 煮干し / 文化変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究実施計画にしたがい、韓国、日本、中国での調査をおこなった。 韓国では、カタクチイワシ利用の現状についての聞き取り調査をおこなうとともに、日本人漁民によって韓国に伝えられた大漁旗や労働歌について、研究協力者による調査、および、専門家との意見交換をおこなった。なお、今年度はトングミンペ(韓国型漁船)に関する調査を実施することができなかったが、次年度あらためて調査をおこない、報告書等のかたちで発表をおこないたい。 日本では、朝鮮海出漁に関する資料が残る、広島県坂町および香川県観音寺市伊吹島の個人宅での調査をおこなった。また、朝鮮海出漁をおこなっていた徳島県阿南市椿泊の祭礼調査もおこなった。さらに、大分県佐伯市の佐伯市歴史資料館において、展示見学をおこなうとともに巾着網や改良揚繰網等の漁具の調査をおこなった。 中国では、青島において、日本人漁民の出漁による中国型漁船の変化について、中国海洋大学の協力を得ながら、簡易計測や聞き取り等の調査をおこなった。 なお、国立歴史民俗博物館と韓国国立民俗博物館との共催による国際企画展示「昆布とミヨク―潮香るくらしの日韓比較文化誌」が、2019年10月2日から2020年2月2日までの会期で韓国国立民俗博物館(ソウル)で開催された。この展示の第3部「海を越える」では、近代における日韓漁民の接触と文化変化を取りあげており、本研究のこれまでの成果が、展示および図録に反映された。本展示は国立歴史民俗博物館(千葉)において2020年3月17日から5月17日までの会期で開催を予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、中止となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予算削減への対応のため、研究対象をカタクチイワシに絞っているが、研究はおおむね順調に進展している。 申請書では、最終年度となる2020年度に、本研究が採用する方法の台湾や中国への敷衍の可能性を検討することとしていたが、2019年度には前倒しで、中国調査をはじめることができた。韓国におけるカタクチイワシの利用についての調査には、若干の遅れが生じているが、2020年度に集中的に調査をおこないたい。 本研究の成果発表としての企画展示の開催については、韓国国立民俗博物館での開催については盛会のうちに終了し、韓国の歴史、民俗系学会やメディアから高い評価を得ることができた。ただし、2020年3月17日から予定していた国立歴史民俗博物館での開催については、新型コロナウィルス流行の影響により開催することができていない。なお、図録については刊行されており、本研究の成果が反映されている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度をむかえるにあたり、これまでの調査研究のとりまとめ、および、今後、本研究をさらに発展させるための準備研究をおこなう。とりまとめへ向けた研究としては、これまで、研究分担者が担当してきた研究についての補足調査をおこない、その成果を報告、論文等にまとめる作業をおこなう。一方、本研究の発展のための準備研究としては、調査地を中国や台湾に広げ、本研究の手法の活用の可能性を探る。 【韓国】①韓国国内の水協(日本の漁協に相当)等に残される戦前の日本人漁民にかかわる資料の所在確認および整理。②トングミンペ(韓国漁船)への日本技術の導入にかかわる調査研究。③煮干しの流通および利用にかかわる調査。 【日本】①各地に残る朝鮮海出漁にかかわる資料の所在確認および整理。②カタクチイワシ漁法の地域的差異にかかわる調査研究。 【中国】①青島等の漁船への日本技術の導入にかかわる調査研究。②中国における煮干し利用にかかわる調査。 【台湾】①近代における日本からの漁撈技術導入にかかわる調査研究。 なお、来年度の調査にあたっては新型コロナウィルス流行の影響をふまえ、調査、研究の内容を調整したい。とくに、海外調査については慎重を期したい。
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Research Products
(9 results)