2018 Fiscal Year Annual Research Report
国法と宗教法人の自治規範との対立・調整に関する研究:非営利法人の位置づけ再考
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17H02474
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大石 眞 京都大学, 法学研究科, 名誉教授 (90091660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田近 肇 近畿大学, 法務研究科, 教授 (20362949)
竹内 康博 愛媛大学, 法文学部, 教授 (40281456)
片桐 直人 大阪大学, 高等司法研究科, 准教授 (40452312)
高畑 英一郎 日本大学, 法学部, 教授 (60307791)
新田 光子 龍谷大学, 社会学部, 教授 (70033751)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 信教の自由 / 宗教法人・団体 / 自治権 / 自治規範 / 教会法 / 宗憲・宗規 / 教憲・教規 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、諸外国における宗教法及び教会法に関する研究成果を踏まえつつ、宗教法人を主たる素材として、(1)憲法上保障された宗教団体の自治権の内実と外延を解明するとともに、(2)わが国の宗教法人による自治規範の制定の現状を探り、その内容を分析しつつ、その国法との対立・調整のあり方をも検討しようとするもので、これによって(3)宗教法人の自治権と法人運営の適正の確保との調整のあり方について考察を行おうとするものである。
そのために、平成30年度は、前年度の成果、すなわち、(a)宗教団体・法人の自治権に関する比較法的・比較文化的研究と(b)わが国の宗教法人の自治規範の調査・収集という基礎的な作業を踏まえて、これをさらに展開する活動を行うとともに、これを全体研究会において発表し、討論することによって、相互の情報共有を図った。この全体研究会は、前期については平成30年7月28日(龍谷大学大宮キャンパス)において、後期は同11月18日(日本大学法学部)において、それぞれ研究協力者も参加するかたちで開催した。
すなわち、まず、前者(a)については、フランス・イタリアにおける現地調査を行うと同時に、家庭的な事情により現地調査ができなかったドイツ関係については、国内で入手可能なの文献・資料の調査を行い、またアメリカについても同国内の宗教団体の内部規則について分析を行うなど、比較法的な検討材料を充実させることによって研究活動をさらに進めることができた。また、後者(b)については、これまでに各種宗教団体の協力によって収集することのできた宗憲・宗規、教憲・教規などに即して、個別の宗教団体が制定している自治規範について、その構造上の特徴や規範的な特性について、順次、分析・検討する作業を進め、その概要を把握することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の理論的背景を支える比較法的・比較文化的素材については、仏伊両国における補足的な調査を実施することができた(仏=平成30年9月、伊=同12月)。予定していた ドイツについては、分担者の家庭的な事情から実地調査を実施できなかったが、代わりに国内で入手可能な文献・資料に基づいて、国家教会法体制下における宗教法の位置づけ(特にカトリックとプロテスタント各々の教会法と国家法秩序との関係)について研究を進めた。アメリカについては、前年度に調査した宗教団体法制と特定宗教団体の自治規範の研究を進めた。 他方、我が国の宗教団体の自治規範の研究に関しては、浄土真宗本願寺派における宗法改定に至った議論の展開、改定作業、改定に伴う種々の取組みについて、宗派関係者に対する聞取り調査を実施するとともに、神社本庁・浄土宗知恩院派を中心に被包括宗教法人実務担当者に聞取りを行うなど、宗憲・宗規などの分析を進めた。 以上の調査・研究成果を共有し、検討するために、前期に第6回(2018年7月28日、龍谷大学大宮キャンパス)の研究会を行い、後期に第7回(同11月18日、日本大学法学部会議室)の研究会を開催した。なお、年度末に予定していた第8回研究会は、構成員の都合が合わないため、次年度初めに開催することにした(平成31年4月20日、大阪大学中之島センター)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、次年度に最終年度を迎えるため、以下のような次年度の研究実施計画に沿って、着実に研究を進めていきたい。 (1)信教の自由の内実や範囲について、諸外国における宗教法・教会法の成果を踏まえて再検討を行うための研究会を開催する(6月9日午前、東京・日本大学)。 (2)収集済みの宗教法人・団体の法人規則・自治規範に関する内容分析を深めるための検討会を行う(9月14日午後、松山・愛媛大学)。 (3)代表・分担研究者が所属している宗教法学会との協力の下に、本研究のテーマと密接に関連するシンポジウムを開催し、これまでの成果を発表するとともに批正を仰ぐ機 会とする(11月9日、京都・龍谷大学)。 なお、上記のように理論的な研究の一環をなす比較法的調査の一部に実施できない部分もあったが、研究全体の取組みに大きな支障をきたすものではない。ただ、担当の分担者において可能なら、今年度に改めてドイツに関する現地調査を行いたい。
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Research Products
(2 results)