2017 Fiscal Year Annual Research Report
The Political Economy of Deflation: Prices, Public Opinion, and Governance
Project/Area Number |
17H02478
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 淳子 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (00251314)
松本 朋子 名古屋大学, 法学研究科, 特任講師 (50783601)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | デフレーション / 経済認識 / 政党支持 / 内閣支持 / デフレ脱却 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究の目的は、物品やサービスの価格の変動や景気について人々がどのように認識しているのか、そして、人々のこのような価格、景気に対する認識がどのように彼らの公共政策や政府に対する評価につながっているかを広く分析することにある。平成29年度は、まず景気、物価に対する人々の認識について焦点をあて、研究を始めた。平成29年度前半で、日本経済に対する人々の認識について世論調査を毎月継続して行なっている時事通信社から、同データ(1968-2016年までの範囲)を購入し、平成29年度後半では、この時事データを用いて、主観的な経済に対する人々の認識と景気判断の関係について二つの研究を進め、学会で報告した。 第一の研究は、景気に対する評価と政治に対する評価(政党支持・内閣支持)を時系列分析するものである。私たちは、この研究において食物とエネルギー価格が上昇すると人々が悲観的に今後の景気を予測する結果となり、それにより内閣への支持が低下することを示した。 第二の研究は、若年時の経験が将来にわたって長期的にその人の経済認識に影響を及ぼすかどうかを分析するコホート分析である。時事通信社から入手した個票データを分析することで、私たちはバブル崩壊の影響を最も受けたと考えられる1965-1980年に生まれた人々が、悲観的な景気判断を行いがちであるという傾向を見出した。 以上の二つの研究から、日本人は全般的に経済の実態における変化に敏感であるものの、個々人の景気認識は若年時の経験によってバイアスがかけられているという示唆を得ることに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、まず時事通信社から世論調査データを購入し、データのクリーニング作業を行った。購入したデータは1968-2016年の現在の景気認識と将来の景気予測に関わる質問項目である。このデータに経済産業省、内閣府、財務省、国土交通省他私企業から入手した物価データを合わせることとで、独自のデータベースを作成した。これらの作業は、平成29年度以前からこのデータ収集作業について初めていたため、平成29年の夏までに終えることに成功した。平成29年度後半は、したがってデータを分析し、二つのワーキングペーパーを作成し、ヨーロッパ政治学会とアメリカ政治学会といった国際学会で報告すると同時に、慶應義塾大学、政策研究大学、東京大学社会科学研究所といった国内の研究機関で報告会を行い、論文の改訂作業に従事した。
また、平成29年度はニューヨーク大学政治学部でテキスト分析を行っているArthur Spirling准教授を東京大学に招聘し、テキスト分析に関する二日間の集中講義を夏に開催した。多くの受講生が東京大学内外から集まり、政治学者がテキスト分析をまなぶ機会の提供になった。平成30年度では、集中講義で学んだテキスト分析を用い、景気についての報道に焦点を当て、テキスト分析を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、平成29年度に作成した二つのワーキングペーパーについて、必要な分析を付け足し改訂し、論文を海外ジャーナル雑誌に提出する。 次に、今年度からは景気に関する報道についてのテキスト分析を始める。GDP成長率、雇用、物価に関する政府の報告書や、日本銀行の金融政策に関するレポート、財政や予算に関する国会審議などが新聞記事でどのように報道されるかを分析する。分析における最大の焦点は、人々の景気認識は、どの程度買い物といった個々の実体験に依存しているのか、あるいは、メディアの報道に依存しているのかを明らかにすることである。 テキスト分析のため1970年以来のデフレーション/インフレーションに関わる新聞記事を収集する。その上で、テキスト分析のモデルを用いて、物価に関わる記事の頻度とともに物価に関わる問題がどのように(例えば肯定的に否定的など)取り上げられているかを検証する。この共同研究のために、ニューヨーク大学政治学部のAmy Catalinacを2週間招聘する。 第三に、現在分析を行っている観察可能なデータからさらに枠を広げ、経済認識が形成されるメカニズムを分析するための、日本の有権者の経済認識に関わるサーヴェーイ実験を行う。食品、ガソリン燃料、衣服、住居、通信などに関わる幅広い範囲の物価に関わる知識とその上下に関わる反応を調べるとともに、それぞれの品目の物価について、日本における過去の物価の情報を与える、或いは、諸外国における物価の傾向について情報を与えることで、回答がどのように変化するかを検証する。
|
Research Products
(2 results)