2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Cold War and Decolonisation in the Middle East and North Africa in the mid-1950s
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17H02487
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
池田 亮 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (60447589)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脱植民地化 / 冷戦 / 中東 / イギリス / フランス / アメリカ / アラブ・イスラエル紛争 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度に続き、スエズ戦争後、どのように問題が解決されたのかを分析中である。スエズ運河の再開(スエズ危機の終了)に際して、アメリカがエジプト資産封鎖を通じて強い経済圧力を行使したこと、およびそれによってエジプトの譲歩を引き出したことを分析した。一般的にスエズ危機は、イギリスが戦争に訴えたものの、アメリカを含む国際圧力を受けて不十分な解決を強いられたと議論される。しかし実際は、アメリカがエジプトから譲歩を引き出すのに大いに貢献しており、イギリスに有利な解決を導くのに貢献したと言える。具体的には、実質的な運河の国際統制を意味する、ICJの強制管轄権をエジプトが受諾するにあたり、アメリカからの圧力が大きな意味を持った。この内容を、2019年6月にアメリカの学会(SHAFR, Society for Historians of American Foreign Relations)にて報告し、2020年1月の研究会でも報告した。今後この発表に基づいて論文を投稿する予定である。 同時に、スエズ危機後、英仏関係が悪化し、このことがフランス第四共和制の崩壊(1958年5月)にどのようにつながるか分析中である。1957年秋にチュニジアは米英から武器を受け取り、このことが旧宗主国であるフランスの世論を激高させた。米英とフランスの間の政策齟齬が第四共和制の崩壊に至る大きな要因の一つであるが、実はフランス側は1956年11月6日にスエズ戦争停戦をイギリスがフランス政府の意向と関わりなく決めてしまったことが端緒だと発言している。これらがどのように関連するのか、今後分析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スエズ危機後の展開について分析を進め、ジャーナルに投稿する準備を進めている。また学会・研究会での報告も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
スエズ戦争後、運河再開に至る政治過程の分析を終えた後は、スエズ戦争をイギリスが開始した動機を分析する。また、スエズ戦争後、英仏関係の齟齬がどのようにフランス第四共和制の崩壊につながるか、分析を進める。
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