2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17H02535
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
玄田 有史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (90245366)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 危機対応 / 異常と変化への対応 / 社会資本 |
Outline of Annual Research Achievements |
家族における危機対応を分析する家族世帯班では、統計法第33条の規定に基づき、総務省統計局「社会生活基本調査」(2016年)の個票データを入手し、その分析を開始した。日常的に家族としか交流がないか、ずっと一人でいる無業者である「孤立無業者」に関する中間的な分析結果は、「週刊ダイヤモンド」(2018年4月7日号、51頁)等で取り上げられるなど、一定の反響を得た。さらに就職氷河期世代が中高年に差し掛かった現在、いかなる状況に置かれているのかについて、多角的な実証分析も開始した。その結果、氷河期世代では、以前の世代に比べて、大学卒の40代前半時点での賃金が大きく低下し、かつ就職活動を断念する、いわゆる「中年ニート化」等が進んでいる実態も明らかになった。総じて家族世帯班では、40歳代の孤立化や就業希望の喪失といった危機が深刻化していることをデータに基づき明らかにした点で進捗を得た。 教育における危機対応を分析する学校教育班では、岩手県釜石高校における学生調査を実施した。それによって、生徒の学力、学習態度、生活習慣などを規定する要因を実証分析し、その中間的な成果について、同校で報告した。 人事労務における危機対応を分析する企業経営班は、岩手県釜石市を中心に企業経営者および人事担当者などへのヒアリング調査を多数実施した。そこでは東日本大震災後の対応を中心に、復興段階に応じた対応のプロセスについて主に情報収集した。 その他、労働歴史班は、企業経営班と合同してヒアリング調査に参加した他、法制度における危機対応班は、労働問題に関する訴訟や労働審判制度の意義や課題に関するアンケート調査への着手を開始した。 また人手不足であるにもかかわらず、賃金が上昇しない状況を労働市場の構造的危機として捉え、複数の論考を書籍として取りまとめ、一定の反響を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績の概要は、当初の研究計画をすべて含むものであり、概ね順調に進展している。特にフィールドワークの対象地域である岩手県釜石市における市役所ならびに地域関係者の方より、多くの研究協力を得ることが出来、それが順調に進展した大きな理由となっている。ただし、釜石市民および市からの移動者に対して実施を予定していた地域労働市場調査については、震災前後の対応に関する自己評価を尋ねることはより慎重に行うべきという判断から、現在のところ、実施を保留としている。それ以外の点については、順調な進捗であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず入手および作成したデータについて分析を本格化していく、最終的には学術論文および書籍などによる刊行を目指している。平成30年度には、岩手県釜石市でのヒアリングをもとに実施した将来の自然災害に対する意識や行動に関して独自に行ったアンケート調査を分析した書籍の刊行を予定している。さらにフィールドワークの対象地域である岩手県釜石市において、平成29年度に二度実施した予備的総合調査を踏まえ、平成30年度と31年度に本格的な総合調査を実施する。総合調査の内容については、適宜中間報告会などを行いながら、最終的には2019年度末に各班の研究を取りまとめた書籍としての刊行を目指している。
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Research Products
(27 results)