2019 Fiscal Year Annual Research Report
Risk, Network and Democracy: Institutional Designs for Sustainable Society and Economy
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17H02536
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
山重 慎二 一橋大学, 国際・公共政策大学院, 教授 (20282931)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市原 麻衣子 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (80636944)
只野 雅人 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (90258278)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リスク / ネットワーク / デモクラシー / 持続可能社会 / 制度設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会の持続可能性を脅かす国内外の様々なリスクに対して、人々はネットワークを形成し、事前・事後の対応を行っている。国家もまたリスクへの対応を行っているが、その政治体制が民主的か否かは、国内外のリスクへの対応やネットワークの形成や活動に影響を与え、社会の持続可能性に影響を与える。本研究は、リスク、ネットワーク、デモクラシーの相互関係を明らかにし、持続可能性を脅かすリスクへの適切な対応を可能にする政策・制度の提案を行うことを目的としている。 3年目となる2019年度は、過去2年で十分に議論・検討できていなかった「紛争」のリスクを事例として取り上げて、リスク、ネットワーク、デモクラシーの関係に関する基礎理論に基づく考察や研究を行った。2020年1月には「紛争」のリスクに関する国際ワークショップを開催し、国内外から研究者を招聘して活発な議論を行い、基礎研究と応用研究の両面で様々な知見を獲得・共有した。 研究代表者は、これまでの研究の一つが注目され、2019年度は内閣府経済社会総合研究所の『2025年以降に向けた持続可能な制度と市場の再構築に関する国際共同研究』(2019年度~20年度)の研究グループの主査を努め、国内外の研究者と一緒に持続可能な制度の設計に関する研究を行うとともに、研究の成果を包括的にとりまとめる日本語の書籍の執筆作業を行った。これらの研究の成果は2019年度にはまとめられなかったが、2021年に公表できるよう取り組んでいる。また、研究分担者・協力者は、2019年度は論文執筆や学会等での報告を通じて、本研究に関わる研究成果を公表した。 なお、2019年度末に実施できなかった国内参加者によるワークショップは、新型コロナウイルス感染症をテーマとして2020年度に実施し、感染症というリスクへの対応という観点から、ネットワークおよびデモクラシーのあり方に関する理解を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、基礎理論の応用として、「災害」、「経済」、「紛争」という3つを取り上げて、研究を行う計画を立て、特に、年度末に実施してきた国際ワークショップでは、2017年度は「災害」、2018年度は「経済」、2019年度は「紛争」をテーマとして、国内外の研究者との対話を行い、基礎研究と応用研究をそれぞれ深めてきた。 2018年度までに明らかになったように、リスク、ネットワーク、デモクラシーの相互関係は複雑で多様であり、一つの理論体系にまとめ上げて、そこから演繹的に様々な応用問題を分析することは困難である。その点は、「紛争」を中心的なテーマにした2019年度の研究でも再確認することになった。 そのような認識の一方で、これまでの研究を通して、リスク、ネットワーク、デモクラシーの相互関係をいくつかのタイプに分類してみることで、様々な問題に関して類似した構造や類似した解決・改善策を見出すことが可能であるとの認識も持つようになった。そして、そのような類型化は、今後発生しうる「社会の持続可能性」を脅かす新たな問題の本質を理解し、解決策を見出すためにも、有用であるとの認識に至っている。 本来、2019年度の早い段階で、そのような分析や考察を含む基礎理論を構築し、それを基にした議論を行えるようになることを期待していたが、既存の研究の調査や応用的研究の分析に時間を取られてしまい、基礎理論の成果の取りまとめに若干の遅れが出ている。 2020年度には、国内外の参加者によるワークショップを開催し、その際に、上述のような基礎研究の成果を提示し、多角的な観点からの批判的検討を行うとともに、様々なリスクへの応用可能性に関して議論を続け、本研究全体の成果を取りまとめて、公表していく。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、本研究の最終年度として、これまで行ってきたリスク・ネットワーク・デモクラシーに関する基礎研究と応用研究の成果を踏まえて、研究の総まとめを行う。 具体的には、研究代表者は、基礎研究およびその応用について、日本語の書籍にまとめる作業を始めており、それを完成させることを目指す。また、内閣府経済社会総合研究所の『2025年以降に向けた持続可能な制度と市場の再構築に関する国際共同研究』(2019年度~20年度)の主査として、本研究での研究成果も取り入れながら、国内外の研究者と成果の公表・出版に取り組む。 2020年度も研究会やワークショップを開催し、その中で見えてくる研究の知見を取り入れながら、研究分担者は、それぞれ学会報告や論文・書籍の執筆に取り組む。特に、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の問題は、感染症という社会的なリスクが、ネットワークを介して広がるという特徴を持つとともに、この問題に対する政府の対応が、感染症のリスクと人々のネットワークに大きな影響を与えるため、民主主義的な政府は、どのような対応行えば良いかに関して様々な議論が行われている。本研究の重要性が見出される応用例として最もふさわしい事例であり、2020年度は、この問題を積極的に取り上げて、研究会などを通して研究を深めると同時に、本研究の成果の社会還元の一つとして、ホームページで研究の成果や示唆を公表することにも取り組む。 なお2020年度は、研究代表者や分担者は、4年間の研究の成果の取りまとめを行う一方で、関連する研究会等への参加を通して、さらなる知見の蓄積に努める。研究テーマはかなり大きく、論文ではその成果を十分公表することが難しいところもあるため、継続的に論文を発表しつつ、単著あるいは海外研究者を含む共著の形での英文の書籍の出版につなげることにも取り組む。
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Research Products
(21 results)