2019 Fiscal Year Annual Research Report
不完全な金融市場下での企業の投資行動と資金調達に関する定量モデル分析
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17H02547
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
芝田 隆志 首都大学東京, 経営学研究科, 教授 (70372597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木島 正明 広島大学, 情報科学部, 教授 (00186222)
西原 理 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (20456940)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 企業金融 / ファイナンス / 資金制約 / 非対称情報 / 最適資本構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究業績は,5本の学術論文を国際学術誌(すべて査読つき)にて公刊,12件の学会報告(国際8件,国内4件),1冊の書籍刊行,国際ワークショップ開催に集約される.
本年度の主要な研究成果としては,次の2点をあげられる.第1に,企業が資金調達の際に制約を受けるとき,その制約が負債のクレジットスプレッドに与える影響について,オプション理論を用いたコーポレートファイナンス理論モデルの構築を通じて分析を行った.得られた結果としては,資金制約を受ける企業のクレジットスプレッドは,資金制約を受けない企業のものと比較して下落し,制約が強くなればなるほどクレジットスプレッドを下落させることを示した.特に,そのメカニズムが生じる理由とは,資金制約によるクーポン水準の減少が,資金制約による負債価値の減少よりも大きくなるからである.第2に,経営者と投資家(企業株主と債権者)との間に情報の非対称性を仮定し,その非対称性が引き起こす影響について分析した.得られた結果としては,情報の非対称性が大きくなると,債権者は企業に融資する額(負債発行額)を減少させ,クレジットスプレッドも減少させることを示した.上記の2つの結果から,情報の非対称性問題は,企業の資金制約問題と同様のメカニズムを生じさせることを示した.従来の研究では,これらの関連性については明確にされていないため,今後の研究において,さらに詳細について分析していきたいと考えている.
学会報告では,国際学会にて8件,国内学会にて4件の研究報告を行った.また,国内外の研究者を7名(国外5名,国内2名)を東京に招聘し,国際ワークショップを開催した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの3年間の研究では,20本の学術論文を国際学術誌(すべて査読つき)にて公刊し,また国際ワークショップを2回開催し,本研究課題では,小規模ながらも研究拠点を形成しつつある.以上より,当初の計画以上に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
オプション理論を用いたコーポレートファイナンス理論モデルでは,投資行動を資金調達との間の相互作用を考察する際,企業の業績が悪化した場合における負債再交渉を組み込んだモデルが非常に少ないことが明らかになった.それゆえ,今後の研究では,負債再交渉を組み入れたモデルを構築した上で,投資行動と資金調達との間の相互作用について明らかにする.
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