2019 Fiscal Year Annual Research Report
A Compatative Historical Approach to the Structure of Livelihood1600-2000: Household/Market/Public Finance
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17H02548
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷本 雅之 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (10197535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 光生 奈良大学, 文学部, 教授 (10520629)
飯田 恭 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (20282551)
荒武 賢一朗 東北大学, 東北アジア研究センター, 准教授 (90581140)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 公共財供給 / 生活構造 / 世帯経済 / 領主財政 / 火災保険 / 救恤制度 / 家事労働 / 名望家 |
Outline of Annual Research Achievements |
経済生活の維持・再生産の過程において、市場と個人の関係性の中では処理されにくい問題への対応がどのようになされ、それが当該の経済社会の政治・社会制度や人々の再生産の構造とどのような関係にあったのか。この課題への接近を深めるため、本年も月例の研究会を開催した。特に本年はプロジェクトの代表者・分担者個々の研究を進める点に重点をおき、各人の個別報告を積み重ねた。その中で、近世プロシアにおける早期の公的火災保険制度の導入の意義は領主の負担を国家が組織した互助組合が肩代わりしたことにあったこと、日本の領主(幕府・大名・旗本)の財政資料の中で、特に支出データの詳細な松江藩文書の分析から、庶民のために投下される資金はかなり限定されたものであったこと、17世紀後半~20世紀前半の村(大字)で作成された自治経費帳簿によれば、近世・近代の村落自治と村財政において、村人の生活保障の位置づけは高くなかったこと、そして家族・世帯の側からみれば、日常生活を成り立たせる要素は世帯・家族に担われ側面が大きく、それは「家事」労働の処理のされ方にも現れていたこと、などが明らかになってきた。本年度後半は、これらの個別研究の成果を、人々の「生活の存立」を支える「構造」の解明へつながる論点として整理・統合することを進め、その延長線上に、2020年春の社会経済史学会でのパネルの組織を企画した。企画案は採択されたため、代表者・分担者の4報告に加え、近代ドイツ都市史史・近世中国社会経済史の専門家にコメンテーターを委嘱し、今後の共同作業拡張への準備も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も研究会を毎月開き、課題に関する議論を深めている。個々の論点に関する実証研究も共同研究メ ンバーが着実に進め、2020年度春の学会でのパネル報告を組織・応募し、採択に至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も定期的な研究会を続けるとともに、個別実証報告に基づく共同研究者間の相互の報告会も行い、比較史へ向けての全体像の構築と、実証研究との融合を進める。学会でのパネル報告にむけて準備を進めるとともに、研究成果の取りまとめと出版に向けて、近代ドイツ都市史の専門家など、共同研究者の拡充も進めたい。
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