2019 Fiscal Year Annual Research Report
Interdependence of the pre-war Japanese economy and its change over time
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17H02549
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
斎藤 修 一橋大学, 名誉教授 (40051867)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾高 煌之助 一橋大学, その他部局等, 名誉教授 (90017658)
深尾 京司 一橋大学, 経済研究所, 教授 (30173305)
攝津 斉彦 武蔵大学, 経済学部, 准教授 (30613393)
結城 武延 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (80613679)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 経済史 / 産業連関分析 / 歴史的国民所得分析 / 人口労働統計 / 産業構造論 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.西川・腰原1935年I-O表の推計計算を再現し,それを改訂するという当初の計画を断念した(§8 現在までの進捗状況 (1) を参照)。この結果を承け,LTES統計とその推計過程を精査し,かつ令和元年度研究計画にあった戦前期営業報告書データを検討することに注力した。そのなかで,a) 製造業の総産出高を推計するうえで主要なデータである『工場統計表』の扱いにかんして問題点を発見した。それは従業員4人未満工場の推計方法にかかわる(産業別4人未満/5人以上比を1938年以前に関しては不変と仮定)。これは産出高および労働投入だけではなく,動力機械およびエネルギーの投入にもかかわる問題なので,立ち入った作業に十分値すると判断された。b) 戦前期営業報告書集成(雄松堂版)の検討からは,そこから産業別のサービス投入の情報を収集できることが判明した。 2.工場統計表のデータベース化については,1935年のデータ入力を経済研究所の大規模データ分析支援室に依頼し,終了した。上記 1.aと関連して,従業員4人未満工場をカバーする1939-42年の工場統計表(工業統計表と名称変更)を活用して分析するために,外部委託を行って入力を完了した。 3.1930年代におけるI-O推計表の国際比較を行った。英国1935年表,ドイツ1936年表,アメリカ1939年表,日本の西川・腰原1935年表を検討し,生産増加が産業間の投入産出関係を通じて各産業へどう波及したかを考察した。各国の推計方法は予想以上に大きく,技術的借用可能性は大きくなかったが,経済史の国際比較における産業連関表の有用性は確認できた。 4.英国ケンブリッジ大学のDr Leigh Shaw-Taylorが来訪し,上記3の結果を踏まえ,工業化過程における産業構造と労動力部門配分変化に関する意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)西川・腰原1935年表の原拠精査を令和元年度も続けたが,部門ごとの総産出高,中間投入および付加価値についての推計計算を再現することができなかった。西川・腰原(1981)には推計の概略しか記されておらず,推計方法の詳細,とくに投入係数に関する詳細はついに公表されることがなかったからである。 (2)1935年度『工場統計表』のデータベース化を進め,かつ1939-42年の工場統計表(工業統計表と名称変更)が戦時下ではあるが従業員規模4人以下の零細工場をも含む民間事業所の悉皆データであり,しかも4年分あるため,これをフルに活用することとし,外部委託を行って入力を完了した。 (3)戦前期営業報告書集成に収められた膨大な報告書をランダムにみたところ,支出項目に「荷造費」「諸運賃」「郵便通信費」「火災保険料」等があるケースが見つかった。きわめて具体的でサービス関連投入額のデータとして貴重である。1935年には,報告書の情報量は企業ごとに大きく異なるけれども,計7,388件の報告書が存在することを確認した。 (4)西川が遺した長州藩関係ワークシートの整理を進めた。 (5)英国1935年I-O表,ドイツ1936年I-O表,アメリカ1939年I-O表,日本の西川・腰原1935年I-O表を労働表を含めて検討し,産出高を純産出に統一,競争輸入/非競争輸入を調整し,分類を比較可能なかたちに改めた上で労働投入係数と労働誘発係数を計算,生産増加が産業間の投入産出関係を通じて各産業へどう波及したかを考察した。日本は他の三国と比較して,製造業による他部門労働誘発率が総じて高いこと,それは食品や繊維だけでなく,重化学工業についてもいえることが明らかとなった。 (6)英国ケンブリッジ大学のDr Leigh Shaw-Taylorが来訪し,上記3の結果を踏まえ,工業化過程における産業構造と労動力部門配分変化に関する意見交換を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は以下の4点に注力する。 1.1935年I-O表の新推計: 基本的にはLTESの産出高統計を利用して,西川・腰川表および戦後通産省が作成した1951年表における投入係数情報等を参照しながら作業を進めるが,独自の作業として,a) 1939-42年の工業統計表を利用した従業員4人未満工場の分析と,b) 1935年営業報告書に依拠した企業のサービス投入の推計を行う。前者からは,4人未満製造工場の産出高,労働投入,動力機械およびエネルギー投入を5人以上工場の規模別分布から算出する計算式を推定し,それを,4人未満階級をカバーしない1935年工場統計表に適用する(斎藤,尾高,牧野(研究協力者/一橋大学))。後者からは,製造原価項目のうち運賃・通信・保険料等のサービス費用についての情報を収集し,コモディティフロー関連資料等との比較検討を行う(斎藤,深尾,攝津,結城)。 2.新たに作成された1935年表により,令和元年度に行った日英米独四か国比較を完成させる(斎藤,深尾,牧野)。 3.第一次世界大戦前のI-O表については,a) 上記1.aの推定式から得られる4人以下階級を加えた,1909年ないしは1914年の工場統計表データ,b) 1840年代の長州藩資料,c) 『越中の生産』から得られる明治中期在来産業の投入係数情報,d) 戦前期営業報告書集成から判明するサービス投入費情報等を総合して,投入産出関係を推定する(斎藤,尾高,攝津)。 4.以上を遂行するために,科研参加者による内部研究会を年度内に2回,年度末には外部研究者を招いた研究ワークショップを開催する。
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] 序章2019
Author(s)
尾高煌之助・斎藤修
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Journal Title
溝口 敏行・表 鶴吉・文 浩一『アジア長期経済統計4 韓国・北朝鮮』東洋経済新報社(図書所収論文)
Volume: -
Pages: 3-16
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