2017 Fiscal Year Annual Research Report
Strategy and Organization of Multinationals to address the Non-Market Risks and Insitutions
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17H02550
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黒澤 隆文 京都大学, 経済学研究科, 教授 (30294507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橘川 武郎 東京理科大学, イノベーション研究科 技術経営専攻(MOT), 教授 (20161507)
ドンゼ ピエール・イヴ 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (20635718)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多国籍企業 / 政治リスク / 大戦 / 組織デザイン / 税制 / 地政学 / 会社法 / 国際経営 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の黒澤は,海外研究協力者のB.ウプス,N.フォーブスとともに,共編者として,本科研の内容を主題とする専門学術書,International Business and Organizational Innovation: From Total War to Cold War(Routledge社, 国際経営史研究シリーズ)の編集作業を進めた。同書についてはすでに2016年10月に出版契約書に署名し,各章編者の原稿の督促・精査,全体企画に合わせたレビューコメントの送付等を行った。内容本位の審査の結果,一部の著者に入れ替えが生じ,現在の構成は,0) Kurosawa, Forbes & Wubs, 1. Kurosawa & Wubs, 2)Izawa, 3) Spoerer, 4) Kikkawa, 5) Segreto, 6) Forbes, 7) Stokes, 8). Klement, 9) Boon, 10) Buchelliの10章となっている。 分担社の橘川は,その単著(2014)の内容を国外の研究・文脈を踏まえ改稿し上記英文書収録論文とした。これは,日本石油,東亜燃料工業,出光興産,Standard Vacuum, Royal Dutch Shell, Caltexに関する実証研究を踏まえたもので,実施年度における研究成果を盛り込んでいる。 分担者のドンゼは,ネスレの日本での事業活動の研究(2014)を踏まえ分析を戦後に拡張,Hershey(米),味の素(日)を新たに調査対象に加え,研究史把握,スイスでの史料館調査,公刊文献調査を実施した。 上記と並行して,非市場リスクの一種である税制と多国籍企業の関係に焦点をあてたセシッションをBostonで開催されるWEHC (世界経済史会議)に設置しており,その実施に向けた準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の目標は,全体としては,先行着手の英文専門書刊行(著者11名)であり,黒澤に関しては同書序章執筆(研究史総括,基礎概念整理,課題提示,Roche社文書解析,また橘川・井澤においては上記担当章執筆,ドンゼにおいては3企業文献調査であった。このうち全体目標の英文専門書刊行では,1章を担当していたC.Kobrakの死去や,2名の著者の辞退等で新たな著者を確保するなどの対応が必要となり,編集作業が全体にずれ込んだが,編集過程でのそうした不確実性は学術書出版では珍しいものではなく,全体としては順調に進捗しているといってよい。黒澤によるABH(Glasgow)[6月]・現地で編集会議(黒澤/改稿要請の内容確定)は予定どおり行われた。EBHAへの参加は報告テーマの変更により編集打ち合わせ目的に変更されたが,他方でここで予定していた研究成果自体は,予定経営学分野では最も重要なAOM (Academy of Management) でのAll Conference Sessionでのパネル報告として行われ,これは予定以上の成果といってよい。他方,Roche文書の解析は,代表者の学内業務輻輳で遅れ気味である。以上,進捗状況には予定以上の部分と予定以下の部分があるが,全体としてはおおむね順調に進展していると評価しうる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のRoutledge社からの学術書の編集は最終段階に入っているが,入稿には至っておらず,7月半ばまでにこれを済ませ,また9月まで校正等を行う必要があり,これを最優先課題とする。 同時に,7月末から8月はじめに開催されるWEHC (世界経済史会議)の関連セッション(Passage to Panama)についても準備を進める。同セッションは国際課税,租税回避による多国籍企業の戦略・組織へのインパクトを分析するものであり,本課題と密接に関わる。このセッションについても,Business History誌の特集号などの形で公表が予定されており,代表者はその編集作業にあたりつつ,分析概念の整理を行う。また代表者は,2010年以降のロシュ社(計5回),ネスレ社(計4回)史料館調査により,機密電信記録や経営陣のメモ・報告書等,3000点超の史料を撮影済みである。H30年度はこれらの本格的な解析を行う。 分担者の橘川は,上述の石油産業研究を深め,併せて商社・食品企業についても研究を行う。後者としては三井物産,三菱商事,味の素,ネスレの分析を予定している。またドンゼは,ネスレ史料館(Vevey),Hershey(Pennsylvania)史料館で史料調査を行い,また味の素は社史他の公刊文書を用いて,3社の比較分析を行う。
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