2020 Fiscal Year Annual Research Report
Strategy and Organization of Multinationals to address the Non-Market Risks and Insitutions
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17H02550
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黒澤 隆文 京都大学, 経済学研究科, 教授 (30294507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橘川 武郎 国際大学, 国際経営学研究科, 教授(移行) (20161507)
ドンゼ ピエール・イヴ 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (20635718)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多国籍企業 / 政治リスク / 大戦 / 組織 / 災害 / 戦略 / 国際経営 / 地政学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では多国籍企業にとっての「非市場リスク」として特に地政学的・政治的リスク(戦争・占領・接収・封鎖・検閲・ボイコット等)に着目してきたが,2020年に新型コロナ感染症がパンデミックとなり多国籍企業の活動にも甚大な影響を及ぼしたことを受けて,地政学的・政治的リスクを引き起こしうる災害リスクにも対象を拡大して研究を行った。代表者の黒澤は,1920年代に集中する欧州での持株会社制度の整備と多国籍企業によるその採用について各国横断的な情報収集を行い,この時期の持株会社化に,従来いわれてきたトラスト・カルテル化の系譜と別の,政治リスク対応の流れがあることを確認し,英文ジャーナル論文としての成果公開の準備を進めた。パンデミックに関しては,ロッテルダム大学のBen Wubsと連携しつつ,組織学習・行動変容,多様な「時間性」temporalityを主題に政府・企業がとった危機対応に関する分析の枠組みを整理した。 ドンゼ(分担者)は,Business History掲載論文 “The Advantage of Being Swiss: Nestle and Political Risk in Asia during the Early Cold War, 1945-1970” において,脱植民地化と冷戦への対応について次の事実を明らかにした。中立の小国スイスの政府は,多国籍企業を支援するために非公式的な役割を果たしたこと,これがアジア各国での戦後のネスレの長期的プレゼンスの不可欠の前提になったことを解明した。 橘川(分担者)は,上述した研究主題の拡張にも対応して,経済安全保障の要であるエネルギー問題を軸に,震災後の電力産業や再生エネルギー関連政策が企業の組織・戦略にいかなる意味を持ったかを検討し,複数の図書を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年春以降,新型コロナ感染症がパンデミックに拡大した事態の下で,前年度後半から年度はじめにかけて計画していた各種の学会報告,国際共同研究,海外での資料調査においては,その実行に著しい支障が生じた。4月に作成した年度計画は,年度後半の国境往来の再開に期待をかけたものであったがこれも実現しなかった。そうした中,国内で実施可能な既収集資料の精査を進め,またオンライン会議の流れが定着した後は,リモートにより海外研究協力者との協働を推進した。また内容的には,自然災害をも「非市場リスク」に含めることで研究テーマの拡張を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けて研究成果の取りまとめを進める。国際的な往来の再開に備えつつも,オンライン会議となることも想定して,代表者・分担者のこれまでの研究成果の国際学会での報告や査読ジャーナル論文,図書としての刊行を進める。国際的な成果発表の機会として,オンライン開催への開催方式の転換が決定した2nd World Congress of Business Historyや,対面開催を模索しているBusiness History Conferenceを利用する。
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