2017 Fiscal Year Annual Research Report
新しい多様性次元を用いた組織創造性メカニズムの解明
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17H02557
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
妹尾 大 東京工業大学, 工学院, 教授 (90303346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹田 陽子 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (80319011)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 多様性 / 創造的成果 / プロトタイプ / 感情の言語化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、組織構成員の多様性が創造的成果に結びつくメカニズムを明らかにすることである。多様性が組織の成果に及ぼす影響に関する先行研究の結果はばらついており、特に、創造的成果に結びつく具体的なプロセスと、プロセスをとりまく状況要因は十分に解明されていない。本研究は、組織構成員の行動パターンと人的ネットワークという多様性次元を新たに導入し、年齢、性別、国籍、職歴といった多様性次元にとどまらない観点から、組織が創造的成果を生み出すプロセスを詳細に分析する。初年度である平成29年度は、創造性プロセスのアクティビティが、プロジェクトにおいてどのような順序でどの程度の量(時間)発現するかを記録し、各アクティビティの発現や持続がどのような要因によって引き起こされるかを、発話プロトコルや映像を分析することで明らかにした。具体的内容としては、平成29年夏に12名の参加者を集めたワークショップを開催し、新しいサービス・製品を提案する課題を4グループに与えた。その際に、ユーザーニーズを言語化しておく「問題定義有」2グループと、言語化していない「問題定義無」2グループに分け、アイディア創出に質的、量的などのような違いがあるかに注目して比較した。2つのグループ群の比較から、問題定義有の方が、短い発言が多頻度で交わされ、その内容はユーザーの体験を想像し、ユーザーの体験に対する自分自身の感情的な反応や、他メンバーの発言への共感を連鎖して発言することが多く、自分自身にとって共感できるアイディアを構造的に数多く創出した、ことを発見した。この成果は、ユーザー感情を言語化するか否かがアイディア創出のパフォーマンスやアイディア創出後のグループメンバーの共通認識の収束に影響を与える可能性を示唆している点で意義があり、今後の研究につながるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初から計画していた、プロトタイプ(アイディアを他者に解釈可能な形に表現したもの)の種類と使い方がグループのプロセスとその創造的成果にどのような影響を与えるかについて、1回のワークショップという限定的なデータ収集ではあるものの、これを分析して成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
メンバー間の対面接触、身体の微細運動の同調現象データを組み合わせて初年度に構築した仮説の検証をおこなう予定である。また、発想の拡散や収束の必要性、事業化の圧力、事業実施のタイムスパンといったタスク特性や凝集性などの集団特性、プロジェクトの評価基準、リーダーシップなどの組織コンテクストが異なる条件下での比較も順次おこなう。さらには、分析単位を組織においた研究として、近年、社員構成や協力企業、外部専門家の多様性が高まる中で創造的成果が求められている、企業の研究開発部門、企画部門、デザイン部門等、およびクリエイティブ業界、企業コンサルティング等の専門家ネットワークにインタビューし、または現場観察等による事例研究とアンケート調査等による量的調査を実施し、事例研究を遂行する方策である。
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Research Products
(5 results)