2017 Fiscal Year Annual Research Report
経営理念,雇用構造,トップマネジメント構造が企業の財務政策に及ぼす影響
Project/Area Number |
17H02558
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
鈴木 健嗣 一橋大学, 大学院国際企業戦略研究科, 准教授 (00408692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 陽一郎 神奈川大学, 経済学部, 准教授 (10409914)
佐々木 寿記 東洋大学, 経営学部, 講師 (10609738)
中内 基博 青山学院大学, 経営学部, 准教授 (20339732) [Withdrawn]
花枝 英樹 中央大学, 総合政策学部, 教授 (50103693)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 経営財務 |
Outline of Annual Research Achievements |
1961年に発表されたモディリアーニ・ミラー理論以降、コーポレートファイナンス研究は50年以上経過しており、数多くの研究が行われてきた。しかし、これまで蓄積されたコーポレートファイナンス理論では、現実の企業の財務行動に対し、依然としてごくわずかな説明力しか持っていないことが明らかになってきている。本研究プロジェクトの目的は、より広い視点から企業の財務行動(投資,資金調達,利益還元)に及ぼす影響を検証するべく、日本企業特有の要因(主に経営理念,雇用構造,トップマネジメント構造)について検証することにある。 本年は新規研究の準備と関連研究の投稿を行った。日本の雇用慣行や労働者と経営者の関係が財務政策に及ぼす影響について検証するため、まず日本の労働組合に関するデータを有価証券報告書より収集し、詳細なデータを構築した。また、トップマネジメントの構造と財務政策について検証するため、90年から最近までのトップマネジメントに関するデータも整理した。いずれのデータベースの構築の程度やスピードは当初の予定通りである。経営理念についてのデータの構築は進んでいないが、2018年にアンケートベースのデータを構築する予定である。 本年は期間内で、1冊の関連著書が発刊され、2本の査読誌、複数回の学会発表を行い受理された。受理された査読誌のうち1本は国際的な経営学雑誌Top4のうちの1本であるStrategic Management Journalにアクセプトされた。もう1本は国内の査読雑誌である日本経営財務研究学会の査読誌である経営財務研究にアクセプトされた。これらの結果は、当初の目標よりも高い成果が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの大きなプロジェクトのうち、順調に進展しているのは日本の雇用慣行と財務政策、トップマネジメントに関する研究である。日本の雇用慣行については大きく分けて終身雇用、年功序列、企業別労働組合が存在する。本プロジェクトは特に企業別労働組合と終身雇用に注目してデータを構築している。日本の雇用慣行についてのデータは有価証券報告書より2000年から2016年までの詳細な労働組合、平均勤続年数などの詳細なデータを収集した。労働組合を使った研究は順調に進められており、うち1本の論文は英語・日本語での学会発表が決まっており、次年度には投稿できるものと考えている。また、2本目の論文も並行して行っており、こちらは次年度の学会発表を目指している。 また、トップマネジメントの構造と財務政策について検証するため、90年から最近までのトップマネジメントに関するデータも整理した。いずれのデータベースの構築の程度やスピードは当初の予定通りである。前CEOとのSocial capitalが次のCEOの選択に大きな役割を果たすことを示した研究がStrategic Management Journalに掲載されることになった。CEOの選択はトップマネジメント研究において非常に重要な位置づけにあり、CEO選択についての2本目の研究も順調に進んでいる。 経営理念についてのデータの構築は進んでいないが、2018年にアンケートベースのデータを構築する予定である。経営理念プロジェクトに関してはデータが構築され次第、学会発表および投稿を進めていく予定である。 現在までの進捗状況は、当初の目標どおりおおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策について、3つのプロジェクトをそれぞれ説明していく。日本の雇用慣行と財務政策プロジェクトにおいては、日本の労働組合が企業の財務・IR戦略に及ぼす影響について、①労働組合と負債比率、②労働組合と現金保有・配当政策、③労働組合と経営者予想誤差の観点から研究をすすめていく予定である。③の労働組合と経営者予想誤差の研究は次年度において学会発表が決まっており、海外のジャーナルへ投稿する予定である。①と②の研究においても検証結果は得られており、国内外のジャーナルを目指し投稿する予定である。日本の長期雇用と企業リスクの関係についてはデータを収集し分析を進めている段階にあり、次年度の学会発表を目標としている。 トップマネジメントに関する研究は、CEOの選択問題についてより深く議論していく予定である。CEOのSocial capitalの影響が選択後の企業行動にいかに影響を及ぼすかについて分析を進めている段階にあり、次年度には論文を完成させ学会発表を行うことを目標としている。また、CEO選択についてもSocial capital以外の新たな視点を取り入れ研究をすすめていく予定である。 経営理念に関する研究について、①経営理念と経営者予想、②経営理念とイノベーション、③経営理念と財務行動という観点から研究をすすめていく予定である。①経営理念と経営者予想に関しては概ね結果が得られており、次年度に論文を書き上げる予定である。②に関しては特許情報を整備している状況にあり、経営理念が特許取得行動にいかに影響を及ぼすのか検証している。次年度には分析結果を終え、次々年度には学会発表、投稿を行う予定である。③のプロジェクトは①,②が終わり次第進めていく予定となっている。
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