2019 Fiscal Year Annual Research Report
An empirical investigation on methodological conversion of economic policy for SMEs through economic gardening method
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17H02569
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
竹村 正明 明治大学, 商学部, 専任教授 (30252381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 一 明治大学, 商学部, 専任教授 (00205478)
石田 万由里 玉川大学, 経営学部, 准教授 (30782370)
山本 尚史 拓殖大学, 政経学部, 教授 (80381341)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地域経済 / 地域開発 / 政策策定 / 方法論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまでの調査にもとづいて国際学会4件の発表を行い、2本の関連論文を発表した。研究成果は主に、経験的調査と研究方法論に集中している。経験的調査は、地域政策の知識移転をどのように実現するかという事例研究を主に行った。地域行政、地域経済学研究者のみならず、昨今では経営学者も地域おこし研究でこの領域に参入してきている。それらは草の根的な地域成功例を集積し、そこからその活動の有効性(地域経済再活性化)を強調する。 しかし、方法論的に言えば、それらの草の根運動がいくら成功しても、それを成功方程式として地域経済政策策定に用いることはできない。第1に、地域特性が大幅に異なるからであり(前提条件の違い)、第2に、事例の特殊性を排除できないからである(理論の外的妥当性)。それは事例研究を理論定式化に用いる限界である。 本年度は、そこで事例研究のみならず、方法論と分析理論の開発に注力し、2つの理論モデルを開発した。ここで理論モデルとは、なぜそうなるのか、を説明する枠組みである。理論モデルは2つの次元で構成される。ひとつは、蓄積型の政策策定であり、もうひとつは革新型のそれである。前者は、既存の経済政策をできるだけ維持し、部分的な改善を行うことが特徴である。後者は、新しい担当部署を組織化し、これまでにない政策を行う。首長が変わったとき、この方法が採用されることが多い。 本研究の予測では、蓄積型の政策策定は大都市で採用されることが多く、成功率が高い。革新型の政策策定は、大成功が期待されるが、そうでないことが多く、地域政策に関して言えば有効性は低い。なぜなら、そういうやり方に慣れていないからである。これまで本研究は後者の手法の導入を主張してきたが、どうもそうでもないという新しい知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況は良好である。それはいくつかの課業を先行的に解決できたからである。特に、47都道府県、過去50年間の財政状況をデータベース化できたことが有効であった。これは極めて大きなデータベースであるが、一昨年1年がかりでそれを構築できたので、昨年度はそれを有効に活用し、国際的な研究発表を実施することができた。今年度は、主にミクロの活動(いわゆる地域草の根活動)。に注視し、それらの成果がどのように地域を超えて移転できるかの理論モデルを開発し、国際学会で発表した。 このモデルは、経営研究で開発された知識移転モデルを地域行政間知識移転に援用した。地域行政間知識移転の問題は、われわれの取材から、次の2つの問題を持つことがわかっている。第1に、地域特性の差である。まず、地域草の根運動は主体が異なることが多い。ある地域では行政が主体になり、ある地域ではNPOが主体になる、というようなことである。この場合、予算構造、活動範囲、成果について認識が異なるので、成功例を移転することができない。第2は、知識移転メカニズムに起因する理由である。知識移転は主に2つの条件を仮定している。一つは、個人と組織の知識構造の類似性である。すなわち、個人の知識は形式知化されると組織の形式知として移転できるということである。形式化された知識は個人から個人に移転できるが、組織に移転できるという保証はない。そもそも組織レベルの知識移転が測定できる概念ではない。もうひとつは、草の根運動に暗黙知があるかどうかわからないことである。取材に行った場合、語られることは形式知であり、暗黙知ではない。暗黙知から形式知への変換を移転の条件としているならば、そこのメカニズムが不明である。この問題を解決するモデルを開発することが課題と理解できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は研究最終年度なので、主に成果発表を中心に行う計画であった。しかし、コロナウィルスの影響で、すでにエントリーしていた2つの国際学会がキャンセルされてしまった。年度後半には、それらの影響は軽微になると予想はされるが、半年以上、外部と接触するような活動(フィールド調査、口頭での研究発表)は延期されるだろう。そこで、後半の成果発表は積極的に行うが、リモートを使った発信を考える。 本研究の初年度に専用のウェブサイトを構築し、常に、情報発信を行ってきたが、これまでは出来上がったものだけを、著作権に注意しながら、発信してきた。今年度は、このような事情があるので、進捗中の成果も公開する(公刊後、差し替えることで対応する)。 研究課題としては、知識移転の論理構造を再検討し、補完的なモデルを開発することである。上述のとおり、既存の知識移転モデルは、個人の形式知から組織の形式知になることを前提としており、そのメカニズムは明示的でもなければ、検証可能性を予定していたわけでもない。測定尺度を開発して構成要素妥当性を検定する作業が不可欠であるし、何よりも、なぜそれが知識移転なのか、を説明する理論枠組みが必要である。 この知識移転のモデルを経済政策策定方法論の変換モデルに援用して、理論化を図る。その際、過去3年間行ってきた地域実証調査がその理論枠組みづくりに貢献するだろう。今のところ、行政操作システム(改善型か開発型かの施政方法論)と方法論変容モデルが適合するという仮説を持っている。つまり、改善型と開発型それぞれに適合する操作システムがあるというわけである(首長の施政方針がその代表的な指標になる)。このモデルを開発し、それを持って本研究の最終成果とする計画である。
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