2019 Fiscal Year Annual Research Report
同族企業の後継者特性が企業のリスク行動に与える影響:定量的分析
Project/Area Number |
17H02570
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
淺羽 茂 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 教授 (60222593)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山野井 順一 早稲田大学, 商学学術院, 准教授 (20386543)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 中小企業 / 後継者特性 / リスクテイキング / 同族企業 / 経営者の心理的特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、2018年度に行った、東京都23区の中小企業15000社の経営者に対する質問票調査の分析を行った。また、中小企業庁編の『小規模企業白書』などをもとに、中小企業の事業承継の実態を把握した。この2つをもとに論文にまとめて発表した。その要旨は以下の通り。 中小企業の事業承継の実態は以下のようにまとめられる。後継者が決まっている企業は全体の半分に満たず、3割強の企業では候補者もいない。決定した後継者の8割から9割は親族であり、子供が圧倒的に多い。後継者に求められる能力は、事業に関する知識や実務的経験である。事業承継を進めるためには、後継者教育、後継者への引継ぎ、権限の委譲が必要である一方、会社の財務状態、会社の将来性・事業計画といった会社の状態や、事業承継準備期間の確保、後継者のサポート体制、相談相手の有無なども事業承継の可能性に影響を及ぼす。次に、東京の中小製造企業を対象に独自に収集したデータの分析では、研究開発投資を行った企業、十分な事業承継準備期間の確保や(金融機関など)親族外人物による承継プロセスへの関与が重要であると考える企業は、後継者を決定する可能性が高いことが示された。研究開発投資を行う企業は、長期的存続を重視し、事業承継に熱心になるのではないかと考えられる。準備期間や相談相手が事業承継上の課題であると認識する企業は、認識した課題に対応し、事業承継を進めることができるのではないかと考えられる。 また、2回目の繰り越しである2021年度には、東海地方と長野県の中小企業に対して、現経営者と承継候補者の心理的特性と事業承継について尋ねた2回目の質問票調査を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は、前年度に取得した質問票調査データの分析が、当初の想定に反してデータの複 雑性による分析結果の解釈が困難であったため、完了することができなかった。1回目の繰り越しによって、このデータ分析は2020年度に完了することができた。また、2019年度末までに、インタビュー調査、新たな質問票調査を行う予定であったが、繰り越した2020年度もコロナ禍の影響でできず、2回目の繰り越しによって、2021年度に、何社かのインタビュー調査を行い、2回目の質問票調査を行うことができた。ただし、分析、成果の発表はできていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度に、2回目の質問票調査で取得したデータを分析し、論文を執筆し、海外の学術雑誌への投稿を予定している。
|