2017 Fiscal Year Annual Research Report
復興の新たな段階におけるコミュニティ・キャピタルの活用と保全に関する比較研究
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17H02594
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
吉野 英岐 岩手県立大学, 総合政策学部, 教授 (90305318)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 竜輔 いわき明星大学, 教養学部, 准教授 (30512157)
内田 龍史 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 准教授 (60515394)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 災害公営住宅 / 被災地復興 / 東日本大震災 / コミュニティ再構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は研究代表者・研究分担者による研究会を3回、連携研究者を加えた全体会を1回開催した。第1回研究会を2017年6月10日に仙台市内で開催し、研究枠組・申請内容・予算の確認、平成29年度までの研究内容の検討、日本社会学会大会での報告について協議した。次いで第2回を2017年10月21日に尚絅学院大学で開催し、学会報告内容の検討、今後の調査内容・日程について協議した。最後に第3回を2018年3月15日に岩手県立大学で開催し、研究の進捗状況、平成30年度の研究計画について協議した。また全体会を2017年10月22日に尚絅学院大学で8名の連携研究者を加えて開催し、情報共有を行った。 主な調査研究としては、災害公営住宅におけるコミュニティ再構築と被災地復興を課題として、被災自治体職員(名取市)、町内会役員〔釜石市)、災害公営住宅居住者及び役員(釜石市、南相馬市)、社会福祉協議会職員(福島県、双葉町、郡山市、いわき市、富岡町)へのインタビュー調査、被災地住民(名取市民2000人)へ質問紙調査を実施した。また、宮城県女川町・石巻市で災害公営住宅の踏査、自治体が発行する東日本大震災関連の記録集・資料の収集を行った。 研究成果としては、災害公営住宅においてコミュニティ・キャピタルの形成・活用がまだ十分には行われていないこと、被災者間で階層分離がみられること、行政はこれらの課題の解決にむけた施策を行っていることが確認でき、今後のコミュニティ再構築にむけた論点を整理できた。 成果報告としては、第90回日本社会学会大会(11月4日・東京大学)災害部会(1)で「東日本大震災後の住宅復興におけるコミュニティの形成」と題して代表者と分担者2名で共同で報告した。その他、第4回震災問題研究交流会(3月23日・早稲田大学)などの各種学会で成果報告を行った。また、研究成果の一部を論文と著作にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は被災地である漁業集落について継続的な調査を実施し、震災後のコミュニティの状況について実態把握を行うことができた。また、災害公営住宅については、制度上の課題(家賃の上昇、退去勧告等)と住民生活上の課題(コミュニティ形成)について問題点を把握した。こうした調査結果から被災地や被災者という概念について社会学的な定義や意味を問い直す必要性を感じ、この点についてより精緻な研究に取り組む必要性をj感じた。 研究初年度ということから、研究枠組の練り上げとコミュニティ・キャピタル等の概念整理のための文献研究に取り組む必要があったが、必要な現地調査を優先して行ったため、こうした作業を十分に行うことができなかった。これらの点は次年度の優先的な研課題としたい。 今後は研究枠組の構築と概念整理を進め、波災害復興の新たな段階におけるコミュニティの再構築とそれに必要な政策のありかたに着目した研究を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、必要な概念整理をしたうえで、コミュニティの再構築やコミュニティ・キャピタルの形成からみた集団移転政策や公営住宅建設の効果の検証や、原発避難者の帰還や移住についての評価分析枠組の構築等を進めていく。平成30年度は、震災復興にかかわる既存研究の検討、分析モデルの構築、合同での現地調査、学会報告を経て、研究成果の出版化にむけた準備を行う。具体的には以下のとおりである。 (1)コミュニティ・キャピタル概念の精緻化と分析の視点の明確化:コミュニティ・キャピタルの概括的定義としては、集会施設や共有地の利用権などのコミュニティのメンバーに付与される諸権利や資産、無形の伝統芸能や行事などの民俗資源、そして社会関係資本からなる一連の資源と定義できるが、概念をより精緻化したうえで、復興過程のなかで住民、行政、支援者がこれらの資源および諸権利をどのように調節、活用、更新していくのかを分析的に解明する。 (2)共同調査の実施:岩手県釜石市、宮城県名取市・岩沼市、福島県いわき市等における災害公営住宅(集合住宅+店舗)、原発避難者向け住宅、集団移転地(高台あるいは平場の自力再建、戸建て公営住宅、集合公営住宅)のコミュニティの運営、周辺既存地域社会との関係、コミュニティ・キャピタルの管理、運営をめぐる被災者、行政・支援者・被災を免れた者との関係を明らかにする。研究代表者と研究分担者が合同で調査し、研究手法や認識の共有化と調整を図りながら、複数地点で量的調査と質的調査を組み合わせた調査を実施し、調査地域間での結果の比較と分析を行う。 (3)学会報告と論文作成:調査結果およびこれまでの研究で得た知見を日本社会学会などの学術学会や研究例会等で報告し、論文を作成する。 (4)研究成果の出版について:研究最終年度(2020年度)での刊行にむけて今年度から具体的な準備を進める。
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Research Products
(15 results)