2018 Fiscal Year Annual Research Report
復興の新たな段階におけるコミュニティ・キャピタルの活用と保全に関する比較研究
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17H02594
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
吉野 英岐 岩手県立大学, 総合政策学部, 教授 (90305318)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 竜輔 いわき明星大学, 教養学部, 准教授 (30512157)
内田 龍史 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 教授 (60515394)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 災害公営住宅 / 被災地復興 / 東日本大震災 / コミュニティ再構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は研究代表者・研究分担者による研究会を4回、連携研究者を加えた全体会を1回開催し、研究代表者・研究分担者による合同現地調査を3回実施した。第1回研究会を2018年6月13日に開催し、研究の進捗状況の確認、2018年度の研究計画、学会報告について協議した。次いで第2回研究会を2018年10月4日に開催し、合同現地調査(福島県、宮城県、兵庫県)および個別調査の結果報告、調査結果から得られた知見とそのとりまとめ、今後の調査研究の進め方について協議した。次いで第3回研究会を2018年12月23日に開催し、次年度に実施する災害公営住宅居住者アンケート、および今後の研究の進め方について協議した。最後に第4回研究会を219年3月17日に開催し、全体会の進め方、今後の研究の進め方について協議した。また第1回全体会を2019年3月17日に8名中6名の連携研究者の出席を得て開催し、平成30年度の活動報告、現地調査報告、今後の調査研究の進め方等について協議し、情報共有を行った。 合同現地調査としては、福島県(2018年8月7日~10日)、宮城県(2018年9月3日~5日)、神戸市(2018年9月17日)で実施した。さらに研究代表者および分担者が個別に現地調査と資料収集を行った。 研究成果としては、宮城県と福島県の被災自治体における災害公営住宅建設に至る経緯やまちづくり政策との関連性、今後の運営上の課題を詳しく聞くことができ、災害公営住宅のコミュニティ・キャピタルとしての可能性と課題を明らかにすることができした。また、神戸市での合同調査から1995年の阪神・淡路大震災からの復興過程と実際に建設された住宅について関係者から直接情報を得ることができ、東日本大震災からの復興過程の特性を考察する論点を整理できた。成果報告としては各所属学会等で報告し、成果の一部は論文。著作として刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は宮城県・福島県・兵庫県神戸市等で合同現地調査を実施し、震災後の災害公営住宅の建設とコミュニティの形勢について実態把握を行うことができた。現地調査で得られた知見は、次年度に実施を予定している災害公営住宅の居住者への質問紙調査の設計に役立てることができる。さらに復興をめぐる意思決定過程におけるさまざまなステークホルダーの存在と、実際に建設された住宅ストックの維持と活用、居住者の福祉の向上など研究を進めていくうえで重要となる論点を獲得できた。 研究2年度目にあたり、研究枠組の練り上げとコミュニティ・キャピタル等の概念整理のための文献研究に取り組む必要があったが、こうした作業を十分に行うことができなかった。これらの点は次年度の質問紙調査の実施までに優先的に取り組みたい。 今後は被災3県の災害公営住宅の居住者への質問紙調査を理論的に支えるような研究枠組の精緻化と概念整理を進めるとともに、復興政策とコミュニティの再構築の関連性を明らかにしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は既存研究の検討および分析モデルの構築を進めたうえで、現地調査を継続的に実施する。調査結果とその解釈を踏まえて分析モデルの有効性を検証したうえで、モデルの精緻化を図る。その後、その分析モデルを現地調査の実施過程にフィードバックさせて、より有効な研究をすすめていく。 現地調査は量的調査として岩手県、宮城県、福島県の災害公営住宅の居住者を対象に、質問調査法を用いて、被災からの復興の度合い、コミュニティの再構築、今後の展望などを質問する調査を実施する。その回答からコミュニティ・キャピタルの形成の度合いや、それらの活用と保全について、3県の比較や対象地ごとの比較を通じて分析を進める。調査は必要に応じて連携研究者およびその他の研究者の協力を得て行う。さらに被災3県の集団移転地の被災者および関係者を対象に、聞き取り調査などの質的調査を実施し、集団移転地における被災からの復興の度合い、コミュニティの再構築、今後の展望などを明らかにして、そこからコミュニティ・キャピタルの形成の度合い、およびそれらの活用と保全について事例的な分析を進める。 各地での調査を実施するにあたり、調査前、調査後に研究代表者と分担者とで複数回の研究会を開催する。また、連携研究者を交えて、年1回の全体研究会を開催し、研究の進捗状況や調査結果および結果の解釈について、確認と意見交換の機会をもち、研究内容について複数の研究者が共有する体制を維持する。 調査結果および分析と考察結果については、日本社会学会などの専門学術団体の研究大会等で報告できるように準備を行う。また被災地での報告会の開催も念頭におきながら、結果の取りまとめを行う。そのほか必要に応じて、さまざまな災害の被災地での経験や復興の状況について資料収集や現地調査を進めて、研究目的が達成できるようにする。
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Research Products
(14 results)