2019 Fiscal Year Annual Research Report
復興の新たな段階におけるコミュニティ・キャピタルの活用と保全に関する比較研究
Project/Area Number |
17H02594
|
Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
吉野 英岐 岩手県立大学, 総合政策学部, 教授 (90305318)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 竜輔 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 准教授 (30512157)
内田 龍史 関西大学, 社会学部, 教授 (60515394)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 災害公営住宅 / 質問紙調査 / 被災地復興 / 東日本大震災 / コミュニティ再構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年度・令和元年度は研究代表者・研究分担者・研究協力者による研究会を6回(2019年5月11日、7月13日~14日、10月6日、12月14日~15日、2020年2月11日、3月20日)開催し、今年度の研究計画、災害公営住宅調査の実施準備、実施、結果の確認、研究成果の報告等について協議した。また、2019年11月~12月に岩手県、宮城県、福島県の被災3県の災害公営住宅居住者に対し、大規模質問紙調査を実施した。なお、新型コロナウイルス感染防止の観点等から、年度末に予定していた全体会の開催は見送った。 被災3県の災害公営住宅入居者に対する大規模質問紙調査の対象世帯数は岩手県2,202世帯、宮城県2,130世帯、福島県2,122世帯、合計6,454世帯である。回収数は2,369世帯で回収率は36.7%となった。その後、回収した調査票のデータを入力、集計、分析する作業を行った。研究成果としては、上記の災害公営住宅居住者の生活実態と意識を質問紙調査で把握し、その結果を各自治体の復興政策や社会経済的背景と関連させることで、課題や成果を確認することができようになった。そして、コミュニティ・キャピタルとしての災害公営住宅の可能性と課題を明らかにすることが可能になった。 成果報告としては、吉野、高木、内田のいずれかが、地域社会学会第44回大会、第91回日本社会学会大会、第6回震災問題研究交流会(2020年3月21日・早稲田大学)で報告を行った。また災害公営住宅の質問紙調査の結果(速報)については、2020年3月4日に岩手県立大学アイーナキャンパス(岩手県盛岡市)で記者発表を行い、取材した新聞社、放送局が記事や番組のなかで紹介を行った。また、そのほかの調査研究に基づく成果の一部については論文・著作として刊行した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は岩手県、宮城県、福島県の各県庁および被災自治体の協力を得て、岩手県、宮城県、福島県の被災3県における災害公営住宅居住者を対象に質問紙調査を2019年11月~12月にかけて実施した。対象地域は岩手県では宮古市、釜石市、大船渡市、陸前高田市、宮城県では仙台市、石巻市、気仙沼市、福島県では福島市、郡山市、いわき市、二本松市、南相馬市で、対象世帯数は岩手県2,202世帯、宮城県2,130世帯、福島県2,122世帯、合計6,454世帯であった。災害公営住宅の居住者の生活実態調査はこれまでも実施されてきたが、3県12市の災害公営住宅を対象に同一の調査票で、同一の時期に6400を超える世帯に実施したことは、初めてであり、それを遅滞なく実施できたことがその理由である。 一方、年度末において、新型コロナウイルスによる感染症の拡大により、全体会が開催できなかった点、研究枠組と実際の調査研究の理論的な整合性の検証、コミュニティ・キャピタル等の概念構成の深化については、今後の課題として残った。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は研究の最終年あたることから、研究成果をとりまとめることに主眼を置く。令和元年度に岩手県、宮城県、福島県の災害公営住宅の居住者(世帯主)を対象にした質問紙調査の結果の検証にかかわる現地調査を実施し、さまざまな角度から結果の分析を行い、居住者の生活と意識の実態を明らかにしていく。その結果から、災害公営住宅におけるコミュニティ・キャピタルの形成の度合い、およびそれらの活用と保全について可能性と課題を考察する。 具体的には、量的調査の結果を調査対象となった自治体(3県、12市)に伝えるとともに、災害公営住宅の建設と運営をめぐる復興政策の成果と課題について、意見交換を行う。さらに、対象世帯に調査結果の概要を伝え、生活状況の改善に役立つようなフィードバックを行う。 各地での意見交換や報告を実施するにあたり、研究代表者は研究分担者、必要に応じて連携研究者を交えて複数回の研究会を開催し、報告内容や方法の調整を図り、より適切な意見交換が実施できるように準備をする。実施後は結果の解釈についても意見交換し、研究目的に適合的な成果を出せるように協議を行う。また、全体研究会を開催し、研究の総括や貢献度合いについて、確認と意見交換の機会をもち、研究成果を研究プロジェクトに参加したすべての研究者が共有できるようにする。 調査研究で得られた結果および考察については、地域社会学会や日本社会学会などの専門学術団体の研究大会等で報告し、論文の執筆および著作の刊行にむけて作業を行う。これらを通じて、被災3県における復興プロセスの課題やこれからの災害に対応できる適切な復興のありについて、コミュニティの再構築やコミュニティ・キャピタルの形成についての展望などを明らかにして、研究目的が達成できるようにする。
|
Research Products
(13 results)