2019 Fiscal Year Annual Research Report
The impact evaluation of reform of the national long-term care insurance system
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17H02605
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
杉原 陽子 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (80311405)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 介護保険制度 / 政策評価 / 介護負担 / 介護・医療サービス / 社会的支援 / 社会的孤立 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は都内一自治体にて以下の調査を行った。(1)一般高齢者調査:65歳以上住民から無作為抽出した4000人に郵送調査を実施。(2)要支援認定者調査:要支援1,2の各介護度から200人ずつを無作為抽出し,認定者本人に訪問面接調査を実施。(3)要介護認定者の介護者調査:要介護1~5の各介護度から200人ずつを無作為抽出し,主介護者(家族)に訪問面接調査を実施。これらの調査結果を2013年と2016年に同地域で実施した調査結果と比較した結果,介護保険や介護サービス,社会的排除・孤立に関して主に以下の知見が得られた。 (1)一般高齢者調査:介護保険制度に対する肯定的な評価は減少傾向で,介護保険料の支払いを負担に感じている人が増加していた。孤立については,誰とも話をしない日が「週に1日以上」という人が2割弱いた。8050問題で注目される「ひきこもり」については,ひきこもり状態の家族・親族がいると答えた人が5%いた。 (2)要支援認定者調査:サービス利用料の自己負担割合が3割の人では,5割弱がサービス利用料が家計にとって負担と答えていた(1割負担の人の1.7倍)。孤立については,近所の人との交流がほとんどない人が要支援認定者の4割を占め,その割合は増加していた。 (3)要介護高齢者・介護者調査:5割弱がサービス利用料の自己負担が家計にとって負担と答えていた。特に要介護5では6割強が家計への負担を訴えていた。自己負担割合別では,2割負担の人で最も負担感が強かった。介護の支援基盤については,要介護認定者の3割弱が一人暮らしで,この割合は経年的に増加していた。介護者が65歳以上という老々介護も6割強と,割合が増加していた。介護サービスについては,訪問介護の利用率が低下し,周囲の人から情報的・情緒的・手段的支援を得ている割合も減少傾向で,総じて要介護高齢者や介護者の支援基盤は脆弱化していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りの調査を実施することができたので、概ね順調に進展しているといえる。但し、想定していたよりも介護の支援基盤の弱まりと高齢者の孤立化が進んでいたため、さらに詳しい調査と分析を行うなど、計画を一部見直す必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に実施した一般高齢者調査,要支援認定者,要介護高齢者・介護者調査について,過去に実施した調査結果と比較し,経年変化とその要因の分析を進める。特に,介護保険制度改革との関連で,どのような人に,どのような影響が生じているのか,並びに社会的排除や孤立を防止する上で,どのような支援が有効なのかを重点的に分析する。 以上の分析に加えて,要介護高齢者や介護者の支援基盤が弱まっている可能性が示唆されたことから,介護を支える基盤として,介護サービス事業所とそこで働く介護職員に対する調査を行い,介護職の確保・定着・育成の観点からも,介護の支援基盤形成に関する検討を加える。
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