2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study on rebuilding of the Clinical Attachment Approach based on the analysis of disciplinary behavior from parents and caregivers to children.
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17H02610
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Research Institution | Japan College of Social Work |
Principal Investigator |
藤岡 孝志 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 教授 (30199301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 尚子 明治大学, 文学部, 専任教授 (00307977)
和田上 貴昭 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (30386289)
宇野 耕司 目白大学, 人間学部, 専任講師 (60707735)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 懲戒行動 / 愛着臨床 / 支援者支援 / 体罰禁止 / 体罰禁止の内在化 / 職員支援プログラム / 在宅子育て支援プログラム / FR行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の研究目的は、愛着臨床アプローチの精緻化であった。1)「通告」という名の親支援開始の分析;親支援に効果をあげている子ども家庭支援センター、児童相談所職員へのヒアリングによって、通告による親支援開始の諸要因に対するアセスメントシート及び対処プログラムの作成を行った。具体的には、「被懲戒の歴史」尺度、「懲戒行動に対する意識」尺度、「懲戒行動」尺度である。海外での調査も行い、日本版を精緻化した。アメリカ、ドイツにおける調査研究から、子育て方法に含める懲戒行動は、育ってきた文化的な背景や経済状況等の影響もあることが明らかになった。 2)在宅訪問による親支援プログラムの構築;親支援アセスメントシート及び親支援開始プログラムを踏まえて、「在宅訪問及び通所による母子家庭支援システムの構築プログラム」の有効モデルの文献的・事例的検討を行った。効果的なプログラム要素を抽出し、愛着臨床アプローチや親子関係理論を適用して、愛着臨床アプローチによる家庭支援システムの構築モデルを作成した。 3)児童養護施設等への職員支援プログラムの構築;被懲戒の歴史を抱える職員のアセスメントを踏まえ、職員自身の親によるFR行動及び懲戒行動の影響を受けていると想定される施設職員に対して、FR行動、および施設における懲戒権の行使に関してヒアリング調査を実施した。また併せて、そのプログラムを適用する際の留意点について施設長からのヒアリング調査を行った。これらを踏まえ、予備的な「児童養護施設等への職員支援プログラム」を作成した。1)、2)3)併せて、海外での調査での結果を踏まえ、精緻化していった。 なお、本研究の途上で、A自治体における条例の制定に際して、体罰を禁止するとの条項が盛り込まれた。本研究の成果(40年前の体罰禁止法の制定で、体罰禁止の内在化がスウェーデンで進んだこと等の調査結果)も参考にしていただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
親の懲戒行動の理論的背景を精査することを踏まえ、2018年度は、懲戒行動の具体的なチェックリストを作成した。在宅子育て支援における子ども虐待の深刻度を段階によって表現できるシートを作成し、かつ、懲戒行動チェックリストを作成した。これは、「被懲戒の歴史」尺度(懲戒を受けてきた種類とその程度)、「懲戒行動に対する意識」尺度(懲戒の範囲内でやってよいこと悪いこと、また子育て方法に含まれる懲戒の内容)、実際にどのような子育て方法を用いて、懲戒行動をとっているかの「懲戒行動」尺度を作成した。また、愛着臨床アプローチを具体的に、子育て支援のセンター、および児童養護施設、児童相談所に取り入れる際の留意点を精査することができた。「愛着臨床アプローチによる家庭支援システム(家庭訪問型および通所型)の構築プログラム」モデルを作成した。これには、マリー・ドジャーらが開発したABCプログラムや、ケンプセンターの在宅子育て支援プログラムなどが援用できることが明らかになった。親や職員に対しての被懲戒の歴史への内省を促す臨床的な留意点も試案を作成した。このような日本の「懲戒行動」及び「被懲戒」の歴史を踏まえた、文化基底的な子育てアプローチの醸成を、愛着臨床アプローチに取り入れることの必要性を精査することができた。特に、子ども虐待への転化の予兆として深刻なFR行動(怒鳴る、「ダメな子」などの心理的虐待にもつながる脅かす行動、及び子育てに自信を無くし、びくびくしながら子育てをするなどの脅かされる行動)に注目することで、家庭教育支援、子育て支援という文脈での支援の開始が可能となる。これらは、アメリカ、ドイツ、スウェーデンなどの調査を踏まえたものであり、「文化基底的な子育てアプローチ」であり、子育て支援方法は、このような観点が非常に重要であることが確認できた。2年目の成果はおおむね達成できていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は、以下の最終段階となる。第Ⅰ・Ⅱステージの再確認:懲戒の歴史の確認、愛着臨床アプローチの適用によるプログラムの精緻化。第Ⅲステージの再確認:懲戒への配慮を含んだ愛着臨床アプローチの適用。第Ⅳステージ:愛着臨床アプローチの精緻化;児童養護施設等への職員支援プログラムの構築・親支援アセスメ ントシート及び親支援開始プログラムを踏まえて、自身の親によるFR行動及び懲戒行動の影響を受けていると想定される施設職員に対して、 FR行動、および施設における懲戒行動に関してヒアリング調査を実施する。その上で、予備的な「児童養護施設等への職員支援プログラ ム」の有効モデルの文献的・事例的検討から効果的なプログラム要素を抽出し、愛着臨床アプローチや親子関係理論を適用して「愛着臨床アプ ローチによる職員支援システムの構築プログラム」モデルを作成する。養育者支援アセスメントシート及び養育者支援開始プログラム作成のためのグループ面接を実施し、共感疲労等の支援者支援の観点も入れた、施設版の「職員支援システムの構築プログラム」を精緻化する。併せて、海外での調査も実施し、精緻化してく。 第Ⅴステージ:以上を踏まえて「懲戒行動行使への対処方略を基礎においた包括的愛着臨床アプローチプログラム」(完成版)の構築・アセスメント及び支援プログラムの整合性、独自性を精査し、効果評価、プロセスの時系列分析・評価の関係を分析するために、試験的に複数の施設及び機関(児童養護施設、子ども家庭支援センター、児童相談所等)で実施し、アウトカムへの寄与という観点からプログラム要素を見直し、プログラム(完成版)を作成する。完成版プログラム(親、施設・機関職員対象)について提案モデルの実施ガイドライン・マニュアルを作成する。その上で、日本あるいは海外において国際会議を開催し、世界基準も踏まえた日本版プログラムを完成させる。
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