2018 Fiscal Year Annual Research Report
高齢期における就労、地域、家庭内活動のバランスとコンフリクト
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17H02619
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
小林 江里香 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究副部長 (10311408)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ボランティア / 高齢者就労 / 家庭内労働 / 健康 / 社会参加 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. ボランティア活動への参加に関する分析と公表 全国から無作為抽出された60歳以上を対象とするパネル調査から、2012年調査の新規対象者(約1300人)の横断的分析を行い、就労・家庭内労働時間と、ボランティア参加との関連を明らかにした。月1回以上のボランティアについては、就労、家庭内労働(孫の世話、介護、家事の合計)とも、これらの活動の非従事者に比べて、少し(就労は月50時間未満)または中程度従事している人のボランティア参加確率が高い一方、月150時間以上(フルタイム)の従事者ではボランティア参加が抑制される傾向がみられた。家庭内労働の種類別では、孫の世話や家事は従事者ほどボランティアにも参加していた(以上、Ageing & Societyに掲載)。 次に、同パネル調査において異なる対象者に実施した2時点(1999年と2002年、2012年と2017年)のデータをプールし、就労変化とボランティア参加の関連を縦断的に分析した結果(約3500人)、退職後のボランティア参加確率は、退職年齢が高いほど低くなることや、退職前のボランティア参加の影響が大きいことが示された(米国老年学会で報告)。これらの結果は、働く高齢者の増加は定期的に活動するボランティアの確保を一層困難にする可能性を示唆しており、退職前からボランティアに参加できる仕組み作りが不可欠である。 2.地域活動に関するグループインタビューの実施 地域活動に参加しない要因をより詳細に検討するため、全国調査とは別に質的データを収集した。具体的には、就労者の多い50~70代を対象として、単身者か否かと性別により分けた5グループ(1グループ5~6人)別に、地域活動への参加に関する意識についてのグループインタビューを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、2017年調査のデータクリーニングを終了し、同データを含む縦断的な分析に着手し、結果の一部については、米国老年学会のlate breakerポスターにて報告することができたため。また、2017年調査の結果の概要を紹介する冊子を作成し、調査対象者へのフィードバックを行うとともに、調査ホームページ上でも公開した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究協力者と連携しながら以下の課題の分析を行い、学会・論文等により研究成果の公表を行う。 1)全国調査データの縦断的分析による課題の検討 全国高齢者のパネル調査について、2012年の新規対象者(当時60歳以上)の2012年と2017年の調査データ(2時点とも回答は約900人)を主な分析対象とし、課題によってはそれ以前の縦断データも合わせて分析する。前年度は地域活動としてボランティア活動に焦点を当てたが、趣味・学習活動、グループ活動、友人・近隣との個人的交流にも範囲を広げ、就労状況やその変化がこれらの地域活動への参加に与える影響が、個人特性や地域特性によりどのように異なるかを明らかにする。また、家庭内・地域活動の参加状況による活動類型と就労が、健康・well-beingに与える影響についても検討する。 2)地域活動に関するグループインタビューの質的分析 前年度末に実施した、50~70代対象のグループインタビューの質的分析を行い、同居者の有無や性別に、地域活動の非参加要因についての鍵概念の整理を行う。
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Remarks |
東京都健康長寿医療センター研究所・東京大学高齢社会総合研究機構・ミシガン大学:中高年者の健康と生活No.5-「長寿社会における暮らし方の調査」2017年調査の結果報告―2019年2月 (全9ページの冊子)
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