2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of moral insight in multi-faced conflict situations
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17H02629
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
首藤 敏元 埼玉大学, 教育学部, 教授 (30187504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上岡 紀美 仙台白百合女子大学, 人間学部, 准教授 (00582529)
樟本 千里 岡山県立大学, 保健福祉学部, 講師 (10413519)
利根川 智子 東北福祉大学, 教育学部, 准教授 (40352546)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 道徳発達 / 心の理論 / 道徳的不活性化 / 社会的認知 / 親の養育スタイル / 自己調整 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,道徳的洞察と道徳的不活性化の初期発達とその関連要因,道徳的洞察の出現に影響する社会的認知の要因,状況要因,及び文化的要因を明らかにする。令和元年度は道徳的洞察の初期発達と道徳的不活性化をもたらす養育タイプに関する4つの研究を実施した。 研究1は幼児を対象に調査し,他者への危害に着目する道徳的洞察は4歳頃には発達しており,誤信念理解とは独立して出現することが見出された。さらに,誤信念理解は「ふり行為」の共有が曖昧な場面での「叩く」行為への悪さ判断と有意に関連していた。研究2は幼児に誤信念課題と「悪意をもって」もしくは「知らずに」片付ける主人公の話を提示し,他者の遊んでいるものを片付けることの善悪判断を求めた。その結果,幼児において誤信念理解の獲得は他者の悪意の推測を適切におこなう能力と関連しているものの,道徳的判断とは関係していなかった。道徳的洞察は「心の理論」の獲得とは独立して発達するものの,他者の意図を推測する必要のある場面での道徳的な領域調整とは関連すると考察された。 研究3は幼児を育てる保護者を対象に,俗信的しつけ言葉を受けてきた経験と現在の養育態度との関連性を検討した。過去に俗信的しつけ言葉を多く受けた保護者は,現在の子育てにおいて統制的な養育期待度を示す傾向の強いことが分かった。研究4では母親12名を対象に5ヶ月間,子どもの反抗反発について観察記録をつけてもらい,子どもの反抗反発の状況と親の関わり方との関係について質的,量的に分析をおこなった。俗信的しつけ言葉のような子どもの不安をあおる働きかけは一定数出現し,このような親のネガティブ感情と統制的な関わり方は,子どもの反抗反発を持続させ,親のストレスを高めることが示された。道徳的不活性化をもたらす認知の歪みは,ストレスの高い親の統制的なしつけから形成されるかもしれないと考察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年目でAランクの国際学会での発表3件、Aランクの国内雑誌への掲載1件を発表できた。幼児と保護者、及び大学生への調査研究は順調であった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる今年度は、昨年度から課題となっている小学生への調査を実施し、幼児期の認知の制約から生じる歪みが児童期に社会的認知の個人差としての歪みにどのようにつながるのかについて分析を深めたい。そのためにも、学校の年間スケジュールのなかに調査を位置づけてもらうなどの工夫をする。また、2019年度の幼児の道徳的判断の調査を材料を変えて追試し、今年度の方法上の問題点を克服したい。そして、幼児期から児童期の道徳的洞察の発達と道徳的不活性化のプロセスに関する心理学的モデルを提案したい。2019年度と同様に分担研究者との打ち合わせを、学会時のものも含めて3回程度確保し、研究を推進させる。
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Research Products
(16 results)