2019 Fiscal Year Annual Research Report
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17H02631
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
針生 悦子 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (70276004)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 言語 / 発達 / 社会的認知 / 方言 / 幼児 / 乳児 |
Outline of Annual Research Achievements |
言語(方言,外国語)は,その話し手が,どのような社会集団に属すかを伝えるものでもある。本年度は,言語(方言)の話者に対する幼児や乳児の認識を,特に方言に焦点をあてながら検討してきた。 具体的に述べると,幼児を対象としたプロジェクトでは,子どもの居住地域によっては,ふだん身近な人々が話す方言とテレビなどのメディアで耳にする方言(いわゆる標準語)が一致しない場合があることに注目し,子どもは,メディアの言語の話者と自地域方言の話者のいずれを,どのような点で信頼するのかについて検討した。結果,メディアで耳にする方言(標準語)と身近な人々が話す方言が一致する東京在住の子どもは,3歳から5歳までのあいだ一貫して,なじみのない他地域方言の話者より標準語話者を好み,その話者が提供する情報を信用することが見いだされた。それに対して,メディアで耳にする方言(標準語)と身近な人が話す方言が一致しない地域の子どもでは,3歳ころには自地域方言話者に対する明らかな好みが見られるものの,5歳になるころには,自地域方言話者を標準語話者より好む,あるいは信用する,といった明確な傾向は見られなくなっていた。このように多様な方言に触れる経験は,特定の方言の話者だけを排他的に信用する傾向を和らげることが示唆された。 乳児を対象としたプロジェクトでは,乳児が(他者のあいだの)人間関係を推測するとき,その人たちが同じ方言を話すかどうかといったことを手がかりにするのかについて検討するための,実験パラダイムの開発に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定どおり研究(データ収集や実験方法の開発)を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまで得られた知見については,論文化を進める。 また,現在COVID-19の流行によって,乳幼児を対象とした対面での実験実施は非常に難しい状況になっている。そこで,対面での実験実施にこだわらず,調査や養育者へのビデオインタビューなど多様な方法によって,子どもの言語獲得に及ぼす”人”の影響について,多角的に検討を進めていく。
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