2018 Fiscal Year Annual Research Report
The mechanisms of making meaning of life and its times from adolescence to middle-age: Long-term longitudinal study
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17H02634
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
白井 利明 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00171033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾崎 仁美 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 准教授 (10314345)
日潟 淳子 姫路大学, 教育学部, 准教授 (20621121)
中村 知靖 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (30251614)
徳田 治子 高千穂大学, 人間科学部, 准教授 (40413596)
遠藤 利彦 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (90242106)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生涯発達 / 時間的展望 / アイデンティティ / 自己 / 縦断研究 / 青年期 / 成人期 / ナラティブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「失われた10年」といわれた世代が40代となり、年長フリーター(厚生労働省、2010)などとかつてない問題を抱えている現状を踏まえ、その世代の青年期から中年期のアイデンティティからジェネラティヴィティに至る発達過程を明らかにすることが目的である。 第1に、本研究は同じ人を追跡していく縦断研究であるため、本年度もこれまでと同様の縦断データの収集を行った。これまで縦断研究に協力を得てきた協力者に、アイデンティティ地位尺度(加藤、1983)と体験的時間的展望尺度(白井、1997)および時間的指向性質問項目(白井、1997)による調査を行った。 第2に、一人ひとりの縦断データの交差相関の分析を行い、青年期から中年期に至る時間的展望とアイデンティティの相互発達について、因果関係の推定を行った。その結果、その多様性が明らかになった。 第3に、時間的展望とアイデンティティの発達軌跡から典型を抽出し、協力者のライフコースの事例研究を行った。その場合、前方視的構成の視点からの分析を行った。その結果、安定と変化は相補的であり、変化することにより安定を作ったりすることがわかった。 第4に、人生の語り直しの意義について、面接調査に基づく事例研究を行った。具体的には、卒業時の就職活動に対する評価について20代に4回、そして40代に1回、質問した。また、40代では卒業時にどのように答えたかの記憶を質問した。これらの変化の過程を分析することで、人生の意味づけは,過去の自伝的記憶に基づいて「ありうる世界」と「ありえた世界」を想定し,それとの対比で時々の現在を捉えることで生じることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、青年期から中年期に至る時間的展望とアイデンティティの相互発達過程を分析することで、人生の意味づけの構築を明らかにすることが目的である。 私たちは、これまで28年間という長期に渡って縦断データを蓄積してきており、本研究もそれを継続している世界的に見ても稀有な研究である。本年度も縦断データを収集し、付け加えることができた。そして、量的データを交差相関により分析するとともに、典型例について質的分析をするという混合法による研究を行なった。その結果、時間的展望とアイデンティティの関係に多様性があるとともに、一人ひとりの人生の意味づけも異なることが明らかになった。 以上から、縦断データを拡張し、分析したことと、それらをとおして今後の面接調査に向けた準備を順調に行うことができたことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、青年期から中年期に至る時間的展望とアイデンティティの相互発達過程を分析することで、人生の意味づけの構築メカニズムと時代性を明らかにすることが目的である。本プロジェクトの3年目は、以下のことを行う。 第1に、これまでと同様の縦断データの収集を行う。具体的には、これまで縦断研究に協力を得てきた協力者に、アイデンティティ地位尺度(加藤、1983)と体験的時間的展望尺度(白井、1997)および時間的指向性質問項目(白井、1997)による調査を行う。 第2に、時間的展望とアイデンティティの相互発達過程についての分析を行うだけでなく、長期にわたる縦断データの基礎的な分析を行う。これは発達の全体像を示すためのものであるとともに、年齢差・性差・世代差・時代差を明らかにするためのものである。そして、ダイナミック・システムズ・アプローチによる分析も行い、成人期の発達のゆらぎとそのメカニズムの多様性を明らかにする。 第3に、20代と40代の面接調査の事例研究について、時間的展望の発達メカニズムや多様なライフコースという観点からの分析を行い、40代のさらなる面接調査に向けて準備を行う。具体的には、これまで主に量的分析で描いてきた成人期の発達について質的分析から検証していくことで、成人期におけるライフコースと人生の意味づけの関連について仮説を生成する。
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