2020 Fiscal Year Annual Research Report

転換期における民衆的教育思想の生成に関する実証的研究

Research Project

Project/Area Number	17H02659
Research Institution	Hokkaido University
Principal Investigator	宮崎隆志北海道大学, 教育学研究院, 教授 (10190761)
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha)	向谷地生良北海道医療大学, 看護福祉学部, 特任教授 (00364266) 大高研道明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (00364323) 照本祥敬中京大学, 教養教育研究院, 教授 (10227530) 小栗有子鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (10381138) 辻智子北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (20609375) 岡幸江九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (50294856) 荻原克男北海学園大学, 経済学部, 教授 (70242469) 宋美蘭北海道大学, 教育学研究院, 専門研究員 (70528314) 内田純一高知大学, 教育研究部総合科学系地域協働教育学部門, 教授 (80380301) 白水浩信北海道大学, 教育学研究院, 教授 (90322198)
Project Period (FY)	2017-04-01 – 2021-03-31
Keywords	コミュニティ・ストーリー / ダブルバインド / 集合的記憶 / 文化的記憶 / 地域健康学習
Outline of Annual Research Achievements	秋田県上郷において健康センターにかかわる実践状況に関するヒヤリング調査を実施し、以下の諸点を明らかにした。第一に、宮原伸二医師による健康センター実践は1970年代の農業構造改善事業の導入と並行しており、地域農業・地域社会が劇的に転換する時期に展開したことが確認できた。この過程における農協の主導性は非常に高く、当初は宮原医師と農協指導部の連携により、地域健康学習が劇的に展開した。しかし、厚生連の経営合理化策により農協が健康センターから手を引くことにより、地域健康学習はとん挫した。各組織の構成員は同一でありながらも、経済システムへの統合が進化することによって、住民・組合員の間にダブルバインド状態が生ずることが明らかになったが、地域社会の共同性の維持機能がダブルバインドを経済システムの変革の契機にすることを抑止した。第二に、以上の事例は、地域社会の経験を意味付け、記憶する機能が民衆の思想形成において重要な規定性をもつことを明らかにした。それを「コミュニティ・ストーリー」として措定すると、アルバックスの集合的記憶論やアスマンの文化的記憶論を地域社会における経験の編集機能として解釈できることを確認した。また、社会システムと社会運動の間に生じる対立の行方は、利害や権利に関する合理性判断以上に、コミュニティ・ストーリーの再編に与える影響力によって規定されるという仮説が導出できた。以上の知見に基づき、民衆思想の構造とその変動を把握する鍵概念としてコミュニティ・ストーリーを位置づけ、そのストーリーを構成する価値を抽出することによって、教育思想の生成や転換の動態を説明できるという見通しを得た。いのちや平等という価値はコミュニティ・ストーリーを媒介にして教育思想を形づくるように思われる。
Research Progress Status	令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
Strategy for Future Research Activity	令和2年度が最終年度であるため、記入しない。