2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development and Evaluation of Curriculum for Algebraic Thinking and its Representation in Elementary and Secondary Education
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17H02693
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
藤井 斉亮 東京学芸大学, 教育学部, 名誉教授 (60199289)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 擬変数 / 代数的思考 / カリキュラム |
Outline of Annual Research Achievements |
初等中等教育段階において、文字a,xなどを用いた「文字の式」は一般性を表現できるが、数字を用いた「数字の式」ではそれができない、という思い込みがある。だが、数学史をみると、文字表記が充実する前では、一般性を含意して論を展開する際は「数字の式」を用いていた。本研究では、このような「数字の式」において一般性を含意している数を擬変数と命名している。 本研究の目的は擬変数の機能に焦点をあて、新しい教材を開発し、同時に既存教材を擬変数の視点から精査・改良し、代数的思考と表現に関するカリキュラムを構築することである。そのために実態調査研究を行い、さらに小学校1年から中学校3年までを対象に授業実践を行い、授業後の児童生徒及び教師への総合的調査からカリキュラムの構築・評価を行うことである。 本年度の研究実績の一つは、日本・米国及びカタール国を対象に実施した実態調査研究により、擬変数の使用実態が顕在化したことである。特に、擬変数を用いた式表現は少なく、米国・カタール国には出現していない。日本においても擬変数を用いた総合式の出現率は0.38%であり、擬変数を用いた分解式でも1.33%しかないことが判明した。この実態調査の結果を踏まえ擬変数の価値と役割・機能をより詳細に分析・考察する必要がある。今後、研究授業の授業者および参観者が擬変数の価値と役割・機能をどう捉えていたのかを明らかにしていくことで、擬変数の使用実態の背後にある要因を明らかにしていく手がかりが得られたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本・米国及びカタール国を対象に実態調査研究を実施し、学会誌に「数学的問題解決における日米共通調査再考-「マッチ棒の問題」の解決における式表現と擬変数に焦点を当てて-」として投稿し受理され、研究の成果を全国誌で公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(~2020年3月31日)は、日本・米国及びカタール国を対象に今年度実施した実態調査研究で顕在化した擬変数について、その役割・機能をより詳細に分析していく。また、擬変数の価値を具現化する授業課題を引き続き開発する。その際にこれまで連携研究者であった太田伸也氏、中村光一氏、西村圭一氏、清野辰彦氏、高橋昭彦氏、松田菜穂子氏を研究協力者として研究協議を行う。また、比較文化的視点を考慮して海外研究協力者として、本年度は特に米国デポール大学高橋昭彦と研究協議する機会をもつ。今年度の研究成果である論文「数学的問題解決における日米共通調査再考-「マッチ棒の問題」の解決における式表現と擬変数に焦点を当てて-」の中で考察の焦点となった擬変数の教授学的可能性について引き続き議論していく。 なお、新しい授業課題の開発が当初計画どおりに進まない時の対応としては、デオファントスの『数論』に見出せる擬変数を教材化していく。すなわち、歴史上すでに擬変数が活用されている文脈に焦点をあて、その授業課題化を行う。
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