2019 Fiscal Year Annual Research Report
教室での知識の創出と進化を促す学習作業空間の構成に関する総合的研究
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17H02701
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
影山 和也 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (60432283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 正孝 広島大学, 教育学研究科, 教授 (30186837)
永田 良太 広島大学, 教育学研究科, 教授 (10363003)
森田 愛子 広島大学, 教育学研究科, 教授 (20403909)
川合 紀宗 広島大学, 教育学研究科, 教授 (20467757)
松宮 奈賀子 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (70342326)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 数学教育 / 共創発カリキュラム / エナクティビズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,中核理論(数学的知識の生成・存在の仕組み)・設計方法論(学習作業空間の意図的設計)・カリキュラム評価(エナクティヴィズム思想による共創発カリキュラム論)の三層のプロジェクトからなる。平成31年度は,確立された中核理論をもとに,数学授業における創発カリキュラムの可能性を論じた。 共創発カリキュラムとは,エナクティヴィズム思想(知識の生産は主体と環境との関係性に強く影響を受けるというもの)にもとづく,広義のカリキュラムの1つである。本研究が注目するのは教師と生徒によって紡がれた経験の道筋としてのカリキュラムである。これは,教師が事前に設計し行った授業と,子どもが実際に身に付けた事柄との合間に位置するものであり,子どもの学びやすさの点で達成に大きな影響を与えていることを主張した。 年度後半は共創発カリキュラムの概念化を目指して事例検討を進めた。この概念は幼児教育研究のなかでしばしば目にするが,そこでは児童をつぶさに観察し,その児童の学びたいことが最大限に許容される。こうした事情は実際の教室でも起こることがある。実際,教室には,数学科教科書にある公的用語だけではなく,その教室だからこそ教師や生徒に共通理解された,自然発生的に使われる語がある。この語の使用履歴が共創発カリキュラムである。事例検討によれば,語の使用と共に物理的道具の役割変化も同定された。このことから次のことが示唆された,すなわち数学で使われる道具(たとえばコンパス)には何重もの役割があり,それは本研究の中核理論によれば,物理法則の支配する世界(紙の上に円を描く)・可能性の世界(特殊の円によってすべての円を代表させる)・理論的世界(概念としての円を表す)のそれぞれのなかで同時に保障されること,したがってこの多重の役割を経験することが数学授業における共創発カリキュラムとして生徒の数学的知識に関わるのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究全体の計画に照らしてみたとき,3年目までで核となる理論構築を終えることとしていた。それが中核理論・設計方法論・カリキュラム評価という三層のプロジェクト構想であり,それぞれの概念化に着手したところである。その概念化を裏付けるための授業の質的データ収集の不足は否めないが,次年度以降の理論の実践化とフィードバックのための基盤は概ね提出できている。したがって,五カ年計画の本研究課題としてみたときには概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当面の取り組み課題は,(i)数学科における共創発カリキュラムのモデルケースの検討,(ii)三層プロジェクトの公開と実践化である。 これらは現在置かれた教育現場の事情を勘案したものであり,当初は数学科を意図して共創発カリキュラムのアイデア実装と教師のための設計方法論の具体化を計画していたが,これらを遂行は柔軟に進めることとした。特に(ii)ではオンラインによる研究成果の連続した公表を予定しており,授業前後の協議とはまた異なる形での実践化を期待している。
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Research Products
(4 results)