2017 Fiscal Year Annual Research Report
Computer-Based Developmental Support System for Pre to Elementary School
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17H02719
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山本 淳一 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (60202389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 航 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (70611440)
皆川 泰代 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 教授 (90521732)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 幼小連携 / 発達支援 / 学習支援 / コンピュータ支援指導 / 発達障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
発達障害児において、幼稚園・保育園から小学校への移行期に出現しやすい問題行動を予防し、安定した発達を促すために、子どもそれぞれに、就学前段階から実施できる幼小連携による発達支援プログラムを構築し、その効果を明らかにした。第1に、各発達領域(言語、認知、自己調整、運動)に応じた「分岐型包括的支援プログラム」を、コンピュータ支援プログラムとして実装した。第2に、プログラムを発達障害幼児に、幼児期から小学校1年次まで長期にわたって適用し、その効果を、多様な定量指標を用いて客観的に分析した。第3に、インターネットを使って地域でプログラムを活用することで、その普及過程と実現可能性を明らかにした。これらの研究を進めることで、支援効果を、行動、認知、対人関係、知覚機能、脳機能など、発達全般にわたる客観的な指標から示すよう試みた。発達支援効果の個人差の分析を通じて、その予測因子を明らかにし、支援による行動の可塑性のあり方を分析することで、行動間の連関、発達の基本メカニズムを分析した。 特に、以下の点で研究実績が得られた。①就学前と就学後の発達支援と学習支援を有機的に連動させた長期にわたるシームレスな分岐型発達支援プログラムを構築し、定量的指標を用いて、その効果を評価した。②アカデミック・スキルとして重要な「ひらがな」「漢字」の読み支援、社会スキル支援のため、支援者が実践現場で活用しやすいコンピュータ支援プログラムを、開発・実装した。③これまでプログラムに含まれてこなかった協調運動機能、自己調整機能の支援方法を確立し、その効果を検証することができた。④「アクセプタンス & コミットメント・セラピー」を応用したペアレントトレーニングを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個人のその時点での発達領域全般にわたって支援目標と方法を決定できる「分岐型プログラム」を構築した。5名の幼児に対して、週1回、支援結果を評価し、次週の支援方法を調整、決定した。構築したプログラムを、幼小をまたぐ期間で適用し、その効果を検討した。構築したプログラムによる発達支援を幼児期から開始し、小学校1年生時まで継続した。俯瞰映像、モーションキャプチャーを用いて、子ども自身のスキル、大人と子どもとの相互作用を、学習過程、対人距離、行動同期という点から定量評価した。fNIRSや視線追跡に関する発達神経科学評価の計測準備を進めた。 (a)読み書き学習支援:「絵・画像」、「文字単語」、「音声」を同時提示することで、学習を促進する教材を作成し、コンピュータに実装した。特に、漢字の読みに関して、スマートフォンアプリに実装した。 (b)社会スキル発達支援:学校場面を想定して、様々な状況での適切な対人相互作用と問題解決を含んだビデオ教材を作成した。日常生活の中で用いるためにコンピュータに組み込み、家庭場面で実施してもらい、ビデオモデリングの効果を検討した。 (c)運動機能支援:以下のような協調運動練習を繰り返すことで、運動そのものの安定性と知覚運動協応を確立する条件を検討した。他者の動きに同期して動く、線に沿って歩く、ラジオ体操を行う、追いかけっこをする、姿勢を正す、姿勢を保持する。 (d)発達支援セラピストの育成:学習・発達支援を実施するセラピストを育成した。セラピスト指導を、マニュアル、ビデオ事例検討、ロールプレイなどを用いて行った。研究実施期間中、定期的に各支援の「実施適切性(Fidelity of Implementation)」を評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)「プログラムのアプリ化」:漢字、ひらがなのコンピュータ支援プログラムは、ほぼ完成しているので、それらをアプリ化する。同時に、社会スキル、運動スキルの支援のためのコンピュータ支援プログラムを完成させ、アプリ化する。(2)「遠隔地支援」:遠隔地在住の子どもを対象に、インターネットを使った教示、コンサルテーションによる支援を実施する。e-Learning教材の使用回数、実際の実施回数など効果を測定する。(3)「長期縦断研究」:より早い段階である4歳から支援を始め、6歳の小学校1年終了まで、長期にわたる支援と評価を実施し、発達に及ぼす効果を分析する。単一事例研究計画法を用い、各指標間の関係を系列解析によって分析することで、発達の可塑性を詳細に明らかにする。(4)「神経科学的評価」:機能的近赤外分光法(fNIRS)を用いて、言語獲得と拡張に伴う脳機能の側性化、対人相互作用の安定にともなう前頭葉の機能化を評価する。(5)「保護者の評価」:保護者の「ストレス尺度」、「子ども養育者関係」を評価する。(6)「自由視点映像などの映像の定量化」:相互作用の画像を、360度いずれの角度でも見ることのできる画像センシング技術である自由視点映像を、社会スキル訓練に活用し、他者視点からの学習を通して、対人相互作用を支援する。(7)「研究開発拠点から実践現場への波及効果の評定」:効果が明確になったコンピュータ支援指導プログラムを統合し、パッケージ化する。親の会、保育園、幼稚園、小学校、学童保育所、児童発達支援事業所、 スクールカウンセリング、巡回相談など、専門機関で活用・普及できるようにワークショップを行う。支援プログラム自体の実行可能性として、アンケート調査やWEB講義へのアクセス数を計測する。
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