2017 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ帯における単一電荷・スピン・フォノンの動力学制御による機能性の探索
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17H02732
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
柴田 憲治 東北工業大学, 工学部, 准教授 (00436578)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 量子ドット / テラヘルツ電磁波 / トンネル効果 / トランジスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、狭ギャップ半導体で非常に強いスピン軌道相互作用を有する材料として知られるInSbの自己組織化量子ドットを活性層とする単一電子トランジスタ素子の作製とその伝導特性の観測を中心として実験を行った。ゲートによる電子状態の変調が困難で変調範囲が極めて限られているが、単一電子伝導を観測することが可能であり、磁場中伝導の様子から大きな電子のg因子を観測することもできた。今後はゲートによる電子状態の変調範囲の拡大を図るとともに、素子作製の歩留まりを上げ、テラヘルツ帯のデバイス応用へと展開したい。その他、高抵抗領域において単一量子ドットトランジスタの単一電子伝導の観測を可能とするため、金属量子ポイントコンタクトを用いた非常に高い感度を持つ電荷検出器の作製にも取り組んだ。その結果、金属量子ポイントコンタクトにおける量子伝導の電界変調に世界で初めて成功した。この成果をさらに発展させることで、極低温から室温までの非常に広い温度範囲で単一電子レベルでの電荷検出が可能となることが期待される。最後に、これまで未開拓の材料系であったGaSb2次元系の量子伝導を観測することに成功した。具体的には、ノンドープGaSb量子井戸に対して、ゲート電界によりホールを誘起することに世界で初めて成功し、量子ホール効果やWeak antilocalizationなどの現象を観測した。将来的に、GaSbの有する非常に強いスピン軌道相互作用と弱い核スピン相互作用を利用したスピントロニクス素子へと展開できると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、自己組織化InAs量子ドットやInSb量子ドットを活性層とする単一電子トランジスタの作製とその伝導特性の評価を行う予定で研究を遂行した。その結果、InSb量子ドットを活性層とする量子ドットトランジスタの作製に成功し、その伝導特性の評価を行うことができた。特に、期待されていた非常に大きな電子のg因子を観測することができたことから、今後はこの特性を用いた単一スピン状態の制御が容易になると期待される。また、量子状態の観測に寄与することが期待される量子ポイントコンタクトを用いた電荷検出器に関する研究も同時に遂行し、それなりの成果を挙げることができた。最後に、従来計画には無かったGaSb二次元ホール系の作製にも本年度成功し、その大きなスピン軌道相互作用を用いたスピン状態の電界制御への可能性を示すことができた。以上を考慮すると、目的実現に向けて着実に前進している状況にあると考えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
自己組織化InSb量子ドットを活性層とする単一電子トランジスタ素子に関しては、ゲート変調範囲が極めて限られている問題があるが、トップゲートや、より最適化されたサイドゲート構造を用いることで特性向上を図る予定である。また、金属量子ポイントコンタクトを用いた単一電子の電荷検出器に関しては、より微細な量子ポイントコンタクトのチャネル構造の作製に取り組むことで、量子伝導の電界変調を容易とした上で、単一量子ドットトランジスタ素子に隣接させて配置し、量子ポイントコンタクトを用いた単一電子伝導の観測を試みる。以上を達成した後に、磁場中、テラヘルツ電磁波照射中における電気伝導特性を観測し、InSb量子ドットの有する大きな電子のg因子によって大きくスピン分裂した量子準位を介した単一電子伝導などを観測することで、テラヘルツ波による単一スピンポンピング等の単一電荷やスピンのコヒーレントなダイナミクスの制御とその観測を実現する。
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