2017 Fiscal Year Annual Research Report
血中がん細胞を無染色識別する「イメージング・バイオマーカー」解析技術の開発
Project/Area Number |
17H02757
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
安田 賢二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20313158)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ナノマイクロバイオシステム / 血中がん細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)マルチイメージング・セルソーター装置技術の開発:初年度は、3つの要素技術の開発を並行して推進した。まず、イメージングセルソーターで高速に細胞を分離するための最大の課題である、微弱電場で分離できる技術の検討、すなわち計画書での課題③「細胞の分離精製技術の改良」を進めた。当初は、従来の水中での細胞表面の持つ微弱な負の電荷を利用する従来の手法から、シリコン油が流れるマイクロ流路中に、細胞を含んだ荷電水滴を流して、これを微弱外部静電場のスイッチングで効果的に分離する流路チップ系の開発を進めたがオイルを組み合わせることの細胞系への影響の可能性から、アルギン酸で細胞を包んで細胞入りアルギン酸微粒子の分離技術の開発を試みた。ここでは、アルギン酸自体が、水中で強い電荷を持っているため、容易に微弱な電場で分離できることを確認した。また、アルギン酸をゲル化する際に用いる二価イオンをCaからBaにゲルの状態を保ちながら置換する技術の開発にも成功した。これによってEDTAやEGTAなど、二価イオンのキレート能力がイオン種によってことなるキレート剤を組み合わせることで、選択的にアルギン酸ゲル微粒子を溶解させることが可能となった。この結果を踏まえて、実際に細胞が内容されたアルギン酸微粒子について課題①ズームレンズ系と開口数の小さな対物レンズ、そして画像処理技術を組み合わせることで必要な細胞集団の形状、細胞核の形状を同定することができるアナログ+デジタル画像処理技術を最適化する技術の改良と、②高い時間処理能力を持った細胞形状識別技術の開発として、明視野像と蛍光像を同時に取得し、これをカメラの1つの受光素子で同時取得・解析する技術の開発を行い、ともに識別・利用可能であることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、東京医科歯科大学から早稲田大学に転出し、新たに昨年度より研究室立ち上げとあわせて研究テーマ立ち上げを行ったため、装置類のセットアップなどに時間がかかってしまったが、2018年3月(2017年度末)には、研究室内にクリーンルームも立ち上げあることができ、これからチップ開発を含めたマイクロ加工技術も含めた全体的な開発が開始できる。したがって2017年度は「(2)おおむね順調に進展している。」とした。先に述べたとおり、2017年度末には整備も進んだため、これによって2018粘度は「(1)計画以上に進展している」にしたいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
マルチイメージング・セルソーター装置技術の開発:初年度に引き続き、3つの要素技術の開発を並行して推進する。まず「細胞塊」をマイクロ流路系で用いる場合には、微小な1細胞から巨大な細胞塊までのサイズの異なるターゲットを同時に流す事ができる巨大な流路断面積を持った流路系を用いる必要が有るが、この場合の課題は被写界深度の幅を増大させて像ぼけが起きにくい観察光学系を構築するために①ズームレンズ系と開口数の小さな対物レンズ、そして画像処理技術を組み合わせることで必要な細胞集団の形状、細胞核の形状を同定することができるアナログ+デジタル画像処理技術を最適化する。次に、②明視野像と蛍光像を同時に取得しカメラの1つの受光素子で同時取得・解析する技術の開発を行う。FPGA技術と高速デジタルカメラを組み合わせ毎秒5000個以上の細胞を実時間判別する技術の原理検討を進める。さらに③細胞の分離精製技術として、従来の水中での細胞表面の持つ微弱な負の電荷を利用する従来の手法から、アルギン酸カプセルに細胞を内包させた細胞をマイクロ流路中で微弱外部静電場のスイッチングで効果的に分離する流路チップ系を開発する。 またソフトウエア技術開発として「細胞塊」「核状態」などの高速同定アルゴリズムの開発を推進する。「3細胞以上のクラスター」をその輪郭あるいは内部の核の分布、形状などから総合的に解明、判断するアルゴリズムを開発する。明視野像で得られる細胞の輪郭は、その輝度に分布があるため既存の自動しきい値による切り出しを行うと周囲形状が欠損する可能性があるため、局所でのしきい値設定を重ね合わせて、正確な「細胞(塊)」の周囲形状の凹凸を数値化する新規のアルゴリズム開発を推進する。また、核の空間分布から、分裂細胞の核形状であるのか、多核細胞であるのか、細胞集団であるのかを識別するアルゴリズムの開発も推進する。
|