2018 Fiscal Year Annual Research Report
血中がん細胞を無染色識別する「イメージング・バイオマーカー」解析技術の開発
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17H02757
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
安田 賢二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20313158)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノマイクロバイオシステム / 血中がん細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に引き続き要素技術の開発を推進した。「細胞塊」をマイクロ流路系で用いる場合1細胞から巨大な細胞塊までのサイズの異なるターゲットを同時に流す事ができる流路系を用いるため、被写界深度の幅を増大させて像ぼけが起きにくい観察光学系を構築する必要があるが、ズームレンズ系と開口数の小さな対物レンズに画像処理技術を組み合わせることで必要な細胞集団の形状、細胞核の形状を同定することができるアナログ+デジタル画像処理技術を最適化することに成功した。 次に、明視野像と蛍光像を同時に取得し、これをカメラの1つの受光素子で同時取得・解析するため、すでに開発・設計してきた複数の単色光明視野同時取得/比較計測技術に、新たにFPGA技術と高速デジタルカメラを組み合わせ毎秒5000個以上の細胞を実時間判別する技術の原理検討を進めた。FPGA技術には市販のNI社FPGAを組み込みフィードバック制御で細胞の流路中での流速を実時間で検出することを可能にした。 さらに細胞の分離精製技術として、アルギン酸によって細胞を包むことによって細胞ごとに異なる細胞電荷に関係なく、表面のアルギン酸カプセルの電荷で安定に細胞を分取する技術の原理検討に成功した(特許出願手続き中)。 またハードウエア技術の開発に並行して「細胞塊」「核状態」などの画像高速同定アルゴリズムの開発を推進し、転移がんモデル動物の血液試料を用いて「3細胞以上のクラスター」を輪郭あるいは内部の核の分布、形状などから総合的に解明、判断する技術を開発した。明視野像で得られる細胞の輪郭を画面全体で判別するのではなく、局所ごとにしきい値設定を重ね合わせて正確な「細胞(塊)」の形状を数値化する新規のアルゴリズムであり(特許出願手続き中)、従来の手法では比較解析できなかった細胞クラスター数の転移がん移植後の増加傾向や多核細胞の増加などを詳細に報告する論文の報告ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2年前に東京医科歯科大学から早稲田大学に転出し研究室立ち上げとあわせて研究テーマ立ち上げを行ったため、装置類のセットアップなどに時間がかかってしまったが、2018年3月(2017年度末)には、研究室内にクリーンルームも立ち上げあることができ、チップ開発を含めたマイクロ加工技術も含めた装置システムの全体的な開発が開始できるようになった。また、動物実験施設の許可も受け、今まで血中の転移がんの状態の日変化をトレースした論文はなかったが、2018年度に初めてこれを論文として公開することができた。また、装置開発も順調に進んでおり、特許出願を進めることができた。これによって2018年度は「(1)計画以上に進展している」と判断させていただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの試作成果を踏まえ、「細胞塊」をより効率的に分析するため、新たに、粒径の違いによって連続して自動的に選別するプレ選別機構を持った微細流路を前処理として付加して、細胞塊のみに特化した計測をする計測系に改善する。この細胞塊のみが流れてくる状況での被写界深度の幅を増大させて像ぼけが起きにくい観察光学系を構築し、ズームレンズ系と開口数の小さな対物レンズ、そして画像処理技術を最適化して細胞集団の形状、細胞核の形状を同定できるアナログ+デジタル画像処理技術を完成させる。また高い時間処理能力を持った細胞形状識別技術の開発として、特に蛍光光源の入射法を工夫して、今年度成功したFPGA技術と高速デジタルカメラを組み合わせた明視野像と蛍光像の1受光素子で同時取得・解析技術の改良開発を行う。さらに細胞の分離精製技術として、アルギン酸カプセルに細胞を含ませて、アルギン酸カプセルの持つ安定した表面電荷を利用して微弱外部静電場のスイッチングで効果的に分離する技術を実用レベルまで改良する。 上記、ハードウエア技術の開発に並行して、システムのソフトウエア技術開発である「細胞塊」「核状態」などの高速同定アルゴリズム(「イメージング・バイオマーカー」抽出技術)の開発をアルギン酸カプセル中の細胞判別技術に発展させて推進する。アルギン酸カプセル中の明視野像で得られる細胞の輪郭は、水中と同様に、その輝度に分布があるため既存の自動しきい値による切り出しを行うと周囲形状が欠損する可能性があるため、今年度開発に成功した局所でのしきい値設定を重ね合わせて、正確な「細胞(塊)」の形状の数値化する新規のアルゴリズムを最適化する。また、核の空間分布から、分裂細胞の核形状であるのか、多核細胞であるのか、細胞集団であるのかを識別するアルゴリズムの開発なども引き続き推進する。
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